
みんな大好き!
「誕生50周年記念 ノンタン ずっとともだち!!!」展
2020年、東京都立川市にオープンした「絵とことば」をテーマにした民間のミュージアム。大人から子どもまで、誰もが楽しめる場所を目指しており、キーワードは「参加すること」。現在は年に5回さまざまな展示を開催している。
〈「誕生50周年記念 ノンタン ずっとともだち!!!」展〉
絵本作家キヨノサチコの代表作「ノンタン」シリーズ(偕成社)の刊行50周年を記念した体験型の展覧会。
元気いっぱい!ノンタンらしさが目を惹くメインビジュアル
今回の展覧会で目を惹くのはなんといってもビビットな色を使ったメインビジュアルのノンタン!絵本とはまた違った配色ですが、元気いっぱい、やんちゃでいたずら好きなノンタンらしさが前面に出ています。このメインビジュアルのデザイン含め本展覧会全体のアートディレクションを担当したのはグラフィック・デザイナーの佐々木俊さん。ノンタンのいい子すぎない、ちょっとわがままで毒気のある部分を表現したいということで、ノンタンらしさを出しつつ、彩度の高い刺激のある色を取り入れてデザインしたそうです。展示担当の金子さんによると「ノンタンの作品では見たことのない配色だったので、ファンの方がどう受け止めてくれるか不安だったんですけど、その不安も吹き飛ばすくらいの反響で、かわいいという声をたくさんいただけて本当に良かったです!」とのことでした。

3世代で愛されるノンタン
「ノンタン」シリーズが最初に刊行したのは1976年。当時の絵本は緻密なものが多く、教育的な要素が求められていた時代ということもあり、その中でもノンタンは異色の存在だったそうです。特にノンタンはわがままでいたずら好きという決して“いい子”ではなかったため、当時は絵本の評論家など一部の大人たちから批判的な意見があったそう。それでも子どもたちには大人気だったので、結果的に子どもたちに寄り添った存在として今も長く愛され続けています。
どのような方が本展覧会に来ているのか金子さんにお伺いしたところ「会期が始まった7月末はファミリー層や若い女性同士のファンの方が多く来ていて、50周年ということもあり3世代に渡って愛されているのが顕著に分かる客層でしたね。夏休みやお盆シーズンからは小さいお子さん連れの方が増えてきて、特に朝一の早い時間帯は完売になることが多いです」ということで、実際に取材した日もお盆明けでしたが、大勢のお客さんで賑わっていました。
すやすやと眠るノンタンの夢の中へ

ミュージアムのエントランスには気持ちよさそうにお昼寝している大きなノンタンがいて、たくさんのお客さんがノンタンの前で記念撮影をしていました。大人でも嬉しいですが、自分が子どもだったらものすごく良い思い出になるだろうなと、思わずうらやましくなってしまいました。
本展覧会は1~3章で構成されています。お昼寝しているノンタンは展示における物語の導入部分になっており、最初の章となるエリアではノンタンの夢の中を体験できる展示になっています。ノンタンのかわいい寝言が聞こえてきたり、お友達と遊んでいる映像が周りに流れたりと五感で楽しめます。さらに、キラキラのミラーボールが回っているのですが、よく見るとノンタン型の光が!なんと本展覧会のために特注で作ったとのこと!ミラーボールをよく見てみると、確かに大小さまざまなノンタン型の鏡が貼りつけてありました。自分が子どもだったらずっと光を追っかけていそうだなと思いましたが、やはり何人かのお子さんはこのエリアで歩き回っていることがあるそうです(笑)。

夢の中を抜けると、ノンタンとおともだちのおふとんが干してあるエリアに。こちらは『ノンタン おねしょで しょん』のワンシーンを再現しており、「絵本を読んでいると『あ、これだ!』っていうのが分かるので、そういった楽しみ方もできます」と金子さんがおっしゃっていました。

子どもたちと作り上げた展示
展示室の壁には白いふわふわのものがいろんなところにあります。金子さんに聞いたところ「これはノンタンの毛玉なんです。展示室の中にもノンタンの気配みたいなものを取り入れたいなと思いまして。猫と言えば抜け毛、という連想ゲームみたいな感じでふわふわの毛玉を置いてみようと思ったんです。池尻大橋にPLAY! SETAGAYAというPLAY! の小さなサテライトスペースがあるんですけど、そちらでワークショップという形で子どもたちと一緒にこの毛玉を作りました。作り方は至ってシンプルなのですが、大きいものを作ったり、違う綿を組み合わせたりと、個性豊かな仕上がりになって面白かったです。毛玉は触っても大丈夫なんですけど、やっぱりみんな触りたいみたいでだんだんはげてきました(笑)。なので、補修しながら展示しています」とのことで、確かによく見ると毛玉によって素材感や大きさが違っていて、探しながら展示を見るのも宝探しみたいで楽しそうです。

さらに進むと、ノンタンが大好きな“あかいじどうしゃ”が展示されています。こちらはダンボールアーティスト儀間朝龍(ぎまともたつ)さんの作品です。開幕前に公開制作を行い、土台となる車をダンボールで作った後、子どもたちと一緒にさまざまなテープを貼って仕上げています。今回ノンタンの誕生日をお祝いするということで、テープを貼る前に土台部分に子どもたちがノンタンへメッセージを書いたそうです。「ノンタンは“あかいじどうしゃ”が大好きなので、誕生日にノンタンが喜ぶものを子どもたちからプレゼントできたら素敵だなぁと思ってやりました。メッセージははっきりとは見えなくなってしまうんですけど、それをしたという事実を残して作品に仕上げたいと思い、こういう形で取り入れました」と金子さんがおっしゃっていました。メッセージの一部はよく見るとうっすら見えるので、ぜひ会場でじっくり見てみてください!

“あかいじどうしゃ”と同じエリアには儀間さんがダンボールをコラージュして制作した『ノンタン じどうしゃ ぶっぶー』の絵本も展示されています。一見すると子どもたちが読み古した絵本のように見えますが、じっくり観察すると絵や線が精巧にコラージュされていてすごいです!

ノンタンの毛玉と“あかいじどうしゃ”は金子さんの中でも特に実現したかった展示だったそうで、「子どもたちと何かをするっていうのを絶対にやりたいと思っていました。ノンタンは子どもたちのために描かれた絵本なので、子どもたちが『ノンタン大好き!』っていう気持ちを展覧会の中で表現できる作品があったら嬉しいなと思い、今回このふたつの展示を実現できて良かったです!」とおっしゃっていました。
特大バースデーケーキでお祝い!

会場内をさらに進むと特大のバースデーケーキが!ケーキの上にはノンタンの大好きな赤いギターが飾ってあります。こちらはコスチュームデザイナーのイナドメハルヨさんが手掛けており、ケーキの表面やイチゴ、ギターなどそれぞれ素材感に合わせた布で作られています。こういった展示はプラスチックなど固い素材で作られることが多いイメージがあり、金子さんに布で作った理由をお聞きしたところ「ノンタンのかわいらしさ、あたたかい感じを表現したいと思い今回は布で作ってもらいました」とのことでした。今回の展示では撮影用に生クリームとイチゴのヘッドピースが用意してあり、お客さんがケーキに扮して記念撮影をすることができます。取材時も小さいお子さんが好きなヘッドピースを選んでケーキの前で撮影していて、とてもかわいらしかったです。

ノンタンと遊ぼう!
次のエリアではノンタンやおともだちと遊べる体験型のコンテンツがたくさん展示されています。中でも大人気なのがブランコ!『ノンタン ぶらんこ のせて』に登場するブランコを忠実に再現していて、たくさんの子どもたちが列を作って遊んでいました。絵本ではノンタンがなかなかブランコをゆずってくれなくておともだちが不機嫌な顔をしている場面があるのですが、なんとこちらもしっかりと再現されています。ブランコを乗っている本人の目の前には笑顔のおともだちが見えるのですが、後ろには不機嫌な顔をしたおともだちがいるので、記念撮影をするとなかなかシュールです(笑)。

「絵本だと10数えたら交代ねっていうお話なので、こちらの展示でも10回こいだら交代っていうふうにしているんですけど、やっぱりノンタンみたいにもっと乗りたいって言って遊ぶ子がいて(笑)。だめなんですけど、嬉しいなって思ってしまいます」と金子さんがおっしゃっていました。実際に列で待っている子どもたちの顔がおともだちと同じ顔をしていて微笑ましかったです。ちなみにこちらのブランコは大人も遊んで大丈夫とのことなので、読者のみなさんもぜひ体験してみてください♪

エリア内では『ノンタンたいそう1・2・3』の映像作品が展示されています。こちらは絵本をもとに展覧会オリジナルで音楽をつけたものだそうで、「体を動かして楽しんでもらおうということで、通常版のほかにも速いバージョンと遅いバージョンを用意しました。作家さんもノリノリでこれを作ってくれて、子どもたちにも好評でみんな食いついて遊んでくれています。アニメーション自体がかわいいので、遠巻きに動画を撮られている方もたくさんいますが、大人の方にもぜひ恥ずかしがらずに踊って欲しいですね」と金子さん。遅いバージョンは予想以上にゆっくりで結構体幹が鍛えられそうでした(笑)。

『ノンタンたいそう1・2・3』の反対側にはクッションが置かれていて、「ノンタン」シリーズとしては7年ぶりに刊行されたポップアップ絵本『ノンタンのおうち』(偕成社)を実際に見て、触れて、遊ぶことができます。夢中で遊ぶ子が多いらしく、中には「帰るよー」と言われてもなかなか遊ぶのをやめない子もいるそうです。さらに、展示室にはこのポップアップ絵本を再現した展示を体験することができます!まるで自分がノンタンの絵本の世界に入り込んだような感覚に。キッチンのシーンでは冷蔵庫などを開け閉めできるので、おままごとをして遊ぶお子さんもいるそうです。ノンタンの寝室では、ノンタンたちがいろいろなところから現れて、鬼ごっこやかくれんぼなどの遊びが始まります。意外なところからもノンタンが現れるので、子どもだけでなく大人も楽しめます。


ノンタンの誕生日をお祝いして一緒にたくさん遊んで会場の奥に進むと、ノンタンが「ありがとう!」と言ってくれるトンネルがあります。“ありがとう”にはいろんなバリエーションがあるそうなので、何度も見てしまいました。どのバージョンもかわいいですが、取材スタッフイチ押しはちょっと小さめの「ありがとっ!」です。ノンタンの声がかわいいのはもちろんですが、こんなに浴びるようにありがとうを言われる機会もないので、大人は癒されること間違いなしです!

原画でたどるノンタンの歴史
最後のエリアはノンタンの原画コーナーになっており、貴重な初期の作品やラフなどが数多く展示されています。
「ノンタン」シリーズは発色が良いのが特徴のためデジタルで描かれているように見えるのですが、実際はアナログで描かれており、アクリルガッシュや水彩絵の具といったさまざまな画材が使われています。金子さんによると「ノンタンの特徴でもあるゆらいだ線は、もともと意識して描いていたわけではないそうです。キヨノさんが面相筆でゆっくり輪郭線を引くとどうしても線がふるえてしまったそうなんですけど、当時の編集者の方が『これが個性になって良いから直さずに残そう』ということでこの描き方になった経緯があるそうです」とのことでした。

本展覧会ではノンタンの前身でもある白い子ぎつねの原画も展示されています。作者のキヨノサチコさんは当初、きつねを主人公に絵本を描きたいと考えていたそうです。というのも、日本の絵本ではきつねは悪者といった嫌な存在として登場することが多く、それがとてもかわいそうだからきつねを主人公にしたお話を描きたいということで、「あかんべきつね」を描いたそうです。しかし、子どもにとってきつねはあまり馴染みがないということで、子どもたちに親しみやすいこねこに姿を変え、今のノンタンが誕生したそうです。

ノンタンの妹・タータンが登場する作品も数多く展示されています。「小さい時の兄弟って複雑な関係ですよね。自分も子どもなのに自分よりも小さい子がいると、子どもなのにしっかりしなきゃいけないし、嫌なことをされても許さなきゃっていう葛藤があると思うんですよ。『ノンタン』シリーズではそういった気持ちを隠さずに描かれているのですが、それがすごくノンタンらしいなと思いまして。なので、こういった原画を見て、絵本を読んでもらってノンタンのお兄ちゃんとしての姿を知ってもらいたいなと思い、展示しました」と金子さんが説明してくださいました。妹のタータンもノンタンに負けず劣らずやんちゃだそうで、原画でもその様子を見ることができます。

展示室にはキヨノサチコさんの作業環境を再現した展示も見ることができます。引っ越しが大好きだったそうで、日本だけでなく海外にも住んでいる時期があったそう!本展覧会ではハワイに住んでいた当時のアトリエを再現しているそうです。

原画コーナーの内容を収録した『ママノンタンの原画集』も今回刊行されており、こちらはスケッチブックのような装丁で子ども心をくすぐります!ちなみに引っ越しに関する面白いエピソードも掲載されているので、ぜひお手に取ってみてください!

30種類以上のノンタングッズ
今回の展覧会ではたくさんのノンタングッズが販売されており、入場制限が掛かるほど毎日大盛況なんだそう!グッズは今回アートディレクションを担当した佐々木俊さんのカラーリングによるグッズと、絵本のノンタンカラーを活かしたグッズの2軸で展開されています。グッズの種類はなんと30種以上あるそうです!

金子さんおすすめの商品は黄色と緑色の靴下とのことで、特に若い人に人気があるそうです。派手な色でノンタンらしさが出ていてとってもキュート!
もうひとつ金子さんイチ押しが毛質にこだわったノンタンのぬいぐるみ。「もともとノンタンのぬいぐるみって洗えたり、子どもが持ちやすい素材で作られていたんですけど、今回ふわふわのノンタンを作りたいなと思い、商品化しました」とおっしゃっていて、実際に触らせてもらいましたがふわふわしていてすごく猫感がありました!

このほかにもパラグライダーの生地を再利用して作られたHOZUBAGのサコッシュやトートバッグ、被るとノンタンになれるニット帽などステキな商品がたくさんあって、どれも欲しくなってしまいます…!
ミュージアム内にあるカフェではノンタンのコラボメニューも展開されており、こちらも連日大人気で、取材時も長蛇の列ができていました!

ノンタン大好き!
最後に金子さんにノンタンの好きなところをお聞きしたところ、「ノンタンがわがままを言った時やふてくされた時の表情が好きで、ノンタンの良さってそこかなと思っています。いい子じゃないけど自分の感情を素直に表現できるところ、包み隠さずにみんなとコミュニケーションとれるところが、大人になるとなかなかできないので、尊敬というか自分もノンタンみたいにストレートに表現できたらいいなと思っています。特に『ノンタン あわぷくぷく ぷぷぷう』のお風呂に入りたくなくてすねている絵がすごく好きで、あれはどうしても展示したくて今回展示させてもらいました」とのことでしたので、ぜひみなさんも会場で原画をご覧いただければと思います♪

取材中も子どもから大人までたくさんのお客さんがノンタンの世界を楽しんでいて、ノンタンはみんなに愛されているなぁと改めて感じました。子どもはもちろん、大人も童心に帰って楽しめる展覧会なので、ぜひみなさんもノンタンの世界を体験してみてください♪
展示担当の金子さん、スタッフのみなさん、お忙しい中取材にご協力いただきありがとうございました!
【展覧会情報】
「誕生50周年記念 ノンタン ずっとともだち!!!」展
会期:2026年7月18日(土)-9月27日(日)*会期中無休
会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟)
開館時間:10:00-18:00(入場は17:30まで)
アクセス:JR立川駅北口・多摩モノレール立川北駅(国営昭和記念公園方面)より徒歩約10分
入場料:一般1,800円/大学生1,200円/高校生1,000円/中学生600円/小学生600円/未就学児無料
*完全事前予約制
*障がい者割引、立川市在住・在学割あり(併用不可)
*いずれも税込
*団体予約の申し込み不可
*安全管理上、保護者1名につき子ども2名まで。保護者1名につき子ども3名以上の入場はお断りしています。子どものみの入場はできません。保護者の同伴が必要です(保護者も有料)(子ども… 小学生・未就学児(0歳〜)/保護者…18歳〜)
※詳細は公式HPをご確認ください。
https://play2020.jp/article/nontan50/
●PLAY! MUSEUM
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