日常と非日常が交差する空間
―「ArtSticker SELECTION」 at スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂―

FEATURE
edit by Shiritaikun
ArtStickerが選出した注目の13組のアーティストによるグループ展「ArtSticker SELECTION」が、スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂で開催中です。
今回は作品と空間の魅力を、アーティストご本人の解説付きで紹介します🦉
<スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂>
2026年3月28日に“藝と珈琲の交差点”をコンセプトにオープン。
谷中御殿坂の歴史や文化に敬意を込めた2階建て木造建築の店舗でコーヒーとともに次世代を担うアーティストの作品を楽しむことができる。

<ArtSticker>
株式会社The Chain Museum運営のアート・コミュニケーションプラットフォーム。
作品販売、チケット販売、音声ガイドなど様々な機能が搭載されており、アーティストと鑑賞者の新しい関係性が生まれる場をつくる。

作品総入れ替えの新しい展示

「スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂」はカフェとギャラリーが一体となったお店として今年3月28日にオープンし、今回は2回目の展覧会になります。

オープンから初めての作品入れ替えとなる今回は、フェア展ということで13組のアーティストが参加するグループ展!

前回は3人展だったため、作品の入れ替えによってお店の雰囲気ががらっと変わり、スターバックスのスタッフの皆さんも感動しておりました。入れ替え後に来店されたお客さんの中には展示作品の変化に気づき、店内をぐるっと見て回られた後なんとなく気に入った作品の近くでコーヒーを飲まれる、なんてこともあったようです。

谷中に点在する路地のようなアプローチを進んだ先の入口。

フェア展のコンセプト byギャラリーディレクター(株)The Chain Museum 佐藤さん

今回はフェア展という形式を採用していまして、あえてテーマは設けておりません。

アーティストの皆様それぞれに大きい作品と小さい作品を1点ずつ、かつ新作を出していただくのを今回のルールとして出展いただいて、1階、中2階、2階のそれぞれに展示をしていただいています。

弊社の方では、今回13組のアーティストを選定させていただきました。

13組をどうやって選ぶかは凄く悩みました。このフェア展の実施は、大体2年前くらいから決めていたので、約2年かけて色々な展示などを見させていただき、ぜひこの方々に、この空間でお願いしたいなということで決めさせていただきました。

展示の会期は2ヶ月と、比較的長めに設けておりますので、ぜひ実際に足をお運びいただき、展示をご覧いただきたいです。

1階の展示

1階は平面作品3組、立体作品2組の展示です!

前田 紗希さんの作品

(大)《tension 26_13》(小)《tension 26_3》

前田さんは今回の展示の中で1番大きい150号サイズの作品を展示しています。

作品は全て、ペインティングナイフのみを使って油絵具を何十層にも塗り固めるという技法で、設計図も一切無く全部を即興で制作されているとのことでした。

「こういう行為をしたから、次はこうしよう」という反応の連鎖を繰り返し制作することによって、そういったことが起こる構造そのものを可視化したいという意識があるそうです。

前田さん曰く、今回の作品は“tension(張力)”というシリーズもので過去作より3次元的な空間への意識が強く、緊張感があり画面の中で引っ張る動作をしているのが特徴だそうです。

ペインティングナイフで筆圧強めに描くことで絵を乗せると同時に削る動作もしているそうで、異なる質感が表現されています!

フカミエリさんの作品

(小)《溶け込む》(大)《impersonate》

フカミさんは、“心の拠り所・在り方”をテーマとしており、作品には「こうありたい」という欲望の部分、いわゆる“自然(じねん)”の思想と自分の世界観、そして実際の世の中の世界観のはざまの空想の部分を描いているアーティストです。

今回は、人物画シリーズと最近特にモチーフにしている風景画シリーズを描かれています。ご本人の中でやってみたい構図、共通の“水”というモチーフで異なるシリーズを描いており、見ているとこちらに何かを問いかけているような不思議な感覚にさせられる作品です。

大胆な色彩感覚がユーモラスで魅力的です。

平山 悠羽さんの作品

(大)(小)《花のイメージ》

平山さんの作品は、ぱっと見た瞬間の美しさがあるだけでなく写真で見た時と遠くから見た時、近づいて見た時とで印象が変わる不思議な質感があります。

ご本人曰く、見えているけど定まらない瞬間が好きなのでその瞬間を捉えることをテーマとしているとのこと。見え方としてはガラスの最初の表面と奥にある何か、この作品だったら花、そして実際に奥に何があるのかと想像した時のイメージの3つのレイヤーが一種の遠近法みたいな感覚を描かれています。

確かに、遠くから見て勝手に花があるように視覚していましたが近くでみるとガラスが万華鏡のように広がっており奥にある花が抽象的にも見えました。

近くでみると筆致の部分があえて残している箇所もあり実際の質感を楽しめます。

穴山 文香さんの作品

(小)《オブジェクト アザー オブザーバー》(大)《不在の効果》

穴山さんは愛知県の瀬戸市という焼き物の町で作品を制作されています。

瀬戸市は器が有名ですが、実は招き猫の名産地でもあります。穴山さんはその招き猫を支持体として制作をしています。呉須(ごす)という顔料を使って青色一色で濃淡をつけて描くという伝統的な技法を用いています。

人間は目の前に無いもの、起きて無い出来事についても想像力をもって自分事として引き寄せて考えることができます。その効果が生み出すものとして物語を生んだり、それが豊かな文化になったりという一面もあれば、利害関係を生んだり対立や分断を起こす側面もあります。その不在がもたらす豊かな面と危うい面がある両義性をテーマにこちらの作品を描いているそうです。

とにかく細やかな描き込みが凄かったので実物を見てほしいです。

後ろもびっしりと全面360度描かれています。

瀬戸 優さんの作品

(大)《まなざしの彼方 -ホッキョクグマ-》(小)《朝霧の先-子ホッキョクグマ-》

瀬戸さんは実物大の野生動物をモチーフに約11年、一貫して動物の彫刻を作り続けているそうです。粘土の素焼きにガラスの目をはめてアクリル絵の具で着彩して仕上げられています。

作品制作の原動力についてご本人曰く、本当に動物が大好きで触りたいという欲求からきているそうです。今回は、ホッキョクグマの親子で子グマの方はまだ何も見えておらず、ようやく世界が見えてきたようなイメージ、母グマはなかなか父親が帰ってこない設定だそうです。

瀬戸さんは作品のテーマに孤独や寂しさとはかなさといった野生の環境に生きる強さを表現しています。

動物園でホッキョクグマを見ることができても種としては本物ですが、動物の在り方としては真実ではないと思われていて、触れられる距離でこのボリューム感で私と動物が出会うということが第一のコンセプトとなっているそうです。

どの角度から見ても質感を感じとることができ、角度によってはなんだか哀愁ただよう作品でした。

粘土の質感を残しながら、なるべく触覚が伝わるような抽象的な仕上げ。

中2階の展示

アーティスト2組による展示。

笹乃衣 春風さんの作品

(小)《何かしてもいいし 何もしなくてもいい》(大)《天体観測》

笹乃衣さんは普段からボードゲームをテーマにした作品を制作していまして今回の作品もそれぞれ、ドミノ(小)、トランプの七並べ(大)をテーマに制作されています。

作品には難解でクイズのような要素があって、いつまでも楽しめるよう考えて設計されているそうです。

今回スターバックスでの展示ということでドリンクを片手に絵の近くに座って、1時間、数時間といわず何日でも見ていただけたら嬉しいと仰っていました。

よくみると数字やマークがちりばめられていて一定のルールがあるとか!

世界地図や設計図を見る事も好きなそうで、作品にも好きなものの影響が感じ取れます。

寺尾 瑠生さんの作品

(大)《From the clouds》
(小)《Phase of dreams Ⅱ》

寺尾さんは、日本美術の作品について考えていて、各美術館が公開している所蔵作品の画像をモチーフに作品を作られています。

日本に二度と戻って来ない、日本の美術品をインターネットを通じて手元に印刷し、それを裁断して複数のモチーフと一緒に織り込んでいくことによってプリントした価値にさらに徐々に時間という価値をつけていくというイメージで制作をしているそうです。

1枚の元の絵があるわけではなく、色んな作品から、身体の部位を抽出して混ぜ合わせる技法を用いられています。

人間の力加減でないと破れてしまうような柔らかい和紙をカッターと定規のみで1.5-1.6mm幅に裁断し、織っているとのこと。

近くで見ると、線の細かさに驚きます。

1枚の作品に寺尾さん自身でも数えきれないくらいの画像を混ぜ合わせて1つの像を作っているんだとか。模様もすべて一定の織り方になっていて、縦と横の関係性によって模様が絶妙なニュアンスで浮き出る、そういった自身で予測できない要素を入れられています。

小さい作品は階段の横にあるのですがつい立ち止まって細部を見たくなってしまいます。

2階の展示

沼田 侑香さんの作品

(小)《Computer drawing “Monitor Error”》

沼田さんは作品に子供の玩具でもあるアイロンビーズを使用しており、ビーズを1個ずつ並べていくことによりピクセルで絵ができるという仕組みを用いています。

作品ではいつもバグであったり、グリッチであったりとコンピュータでしか起こりえない事象を描いており、今回のモチーフは、Windowsのアイコンとエラーのイメージを使われています。

アイロンビーズを使用する理由として、モニターの中で見るバグ、グリッジの事象を描くのにビーズを1個ずつ並べることで絵にしていくという果てしなくアナログな表現を用いることで、デジタルとアナログ両方のイメージを見せることができるのではという思いがあるそうです。

(大)《Computer drawing “waiting for processing ”》

沼田さん曰くこちらの作品は、プロセス中のイメージで自身がスターバックスでPC作業をする時にモニターが固まってしまった経験から、ふと顔をあげて作品を見ることで作品の中にもプロセス中があり、でも作品そのものはアナログで現実の世界に置いてあって・・・作品を通して現実の中とデジタルの世界を行ったり来たりできるようなイメージが見ることができたら面白いかなという思いから作られたとのことです。

作品の前でPC作業をするのは、少し不安にもなりそうですが(笑)、不思議と捗りそうです。

藤原 彩芽さんの作品

(大)《ひとパイロット》

藤原さんの作品は着眼点がとても面白いです。

パネルの四角の四隅が当たったら痛そうという気付きから、痛そうなのは嫌なので基本的に角を丸く切って変形のパネルの中で絵を描くそうです。

ご本人曰く、“感情のコントロール”という言葉や“自分の機嫌を自分でとる”みたいなフレーズがあまり好きではなく、常に何が正常で何が異常なのかの差が分からないと思いながら絵を描いているとのこと。うわーっと思いのまま描いてしまったところを後日、「おかしすぎる」と思い直して修正するといった積み重ねで絵が出来上がっているんだそうです。

遠くからでも色彩がカラフルで目を引きます。近くで見てみると色んな所に様々な人物、モチーフがあり、それぞれに物語があるのに一つの画面としてまとまっています。見ていて楽しいし、色んな感情がこみ上げてくる作品です。

作品のこんなに近くに座って、コーヒーを飲みながら楽しめるなんて驚きです!(小)《ふかふかイス》

會見 明也さんの作品

(大)《変相像 no.10 [不確かさを確かめる術]》

會見さんは、人物を被写体として作品を描くことが多いそうです。自分の中のイメージをドローイング、カットアップして加工・編集することで価値を付与しながら作品を制作されています。

何故このような作品を作っているのかについてご本人曰く、自分が今まで生きてきた世界、知っている範囲が凄く一面的であり、小さな面でしか見ることができていないという思いがあったとのことです。そしてその理由を考えた時に自分が成熟してきた過程には、数ある情報を小さな窓―ディスプレイを通して受け取っていることが大きいのではと感じたそうです。ディスプレイを通して色んな情報を見ることができるものの、それは世界を小さく切り取った断片の集合のようなものでほんの一部でしかない、そういった感覚の中で「自分自身をどう見ているのか」「自分がどうあるのか」という疑問を持つようになり、それを模索するためとのことでした。

色彩感覚がオシャレです。(小)《変相像 no.11 [纏うマネキン]》

山ノ内 陽介さんの作品

(大)《Oilywall》(小)《untitled》

山之内さんの作品は大小それぞれでまるで別の方が描いたような、ふり幅の広さがあります。

大きい作品は感情が揺れ動くような様を丁寧に描いており、小さい作品はレイヤー・色彩のディテールが繊細であり表現の違いが面白いです。

油絵の素材自体の特徴や補助剤の分量で変化する絵の不透明感と透明感・描き味を試すことが楽しく、その楽しさを作品に反映させることを意識しているそうです。

大きい作品の方は、特にその意識が顕著に表れており、ご本人曰く、形を追う作業が入っていると素材自体の追求にあまり意識が向かなくなりがちになるので抽象をやってみて、さらにそこで得た素材の手ごたえの感じを(小さい作品の方へ)あれこれ試して制作しているとのことです。

古典的絵画のモチーフを引用しながらも山之内さんならではの表現で現代的に改めています。(小)《untitled》

ももえさんの作品

(小)《ねぇ》(大)《おはよう》

ももえさんの作品はぱっと見の支持体のユニークさがあります。

平面作品と立体作品の間を行き来するような表現についてご本人としては、やっていることはすごくシンプルですが、ユニークさと二次元的な(日本的な)要素を組み合わせて制作されているとのことです。

また、他のアーティストさんがやらないような手法で作品を裁断しているのらしいのですが、あえてそれを楽しみながら制作されているそうです。

よく見ると細かくシンプルな線で描かれています。(小)《ねぇ》

小泉 遼さんの作品

(小)《Halo #536789035》(大)《enso #8957218400》

小泉さんは“身体性をもった反復する行為”を一筆一筆描かれています。

修行のような制作プロセスを通して、自分自身を内省しながら“自分の存在は何か”、“自分と他者との関係性”について考えながら作品を描かれているそうです。

近くでみると一筆一筆丁寧に描かれた模様を見る事ができます。

大きい作品は“enso”というシリーズで小泉さんの家業が庭師をやっており約10年の庭師の経験から禅や東洋的な思想に影響を受けて始めたシリーズだそうです。始まりも終わりもない円環の坑道の中で一筆一筆描くという行為を通して、過去・現在・未来の時間軸の中に自分という存在を軒並み刻んでいけるような思いを込めて作っている作品とのことでした。

小さい方の作品にもその反復しながら作っていくというプロセスは引き継がれており、その中にさらに新しく光や色彩の感覚をテーマに設定して作られています。

シンプルなモチーフなのに存在感がある作品でした。


今回展示されている13組のアーティストの作品はAitStickerのプラットフォームを通して購入することが可能です。

各作品のキャプションにあるQRコードを読み取ることで作品・アーティストの詳細、そして購入方法にたどり着けるようになっています。

すでにSOLD OUTになっている作品もありました・・・。

どの作品も共通して、実際に実物を見ると写真では伝わらない、また別の魅力に出会うことができます。

スターバックスのカフェ&アートギャラリーという唯一無二の空間で見ることができるのも大きなポイントです。こちらのカフェ&アートギャラリーでは展覧会の期間に展示だけでなくアーティストさんと交流ができるイベントも計画しているそうです!イベント情報は公式インスタグラムから随時発信があるとのことなのでぜひチェックしてみてください。

「スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂」、「ArtSticker」そしてアーティストの皆さん、貴重な体験をありがとうございました!


【イベント開催情報】

「ArtSticker SELECTION」 at スターバックス カフェ & アートギャラリー 谷中御殿坂
・開催期間:2026/07/03(金) – 08.30(日)
・時間:8:00〜21:00 定休日不定休 
・開催場所:スターバックス カフェ&アートギャラリー 谷中御殿坂
・住所:〒116-0013 東京都 荒川区 西日暮里3-2-5
・出展アーティスト:會見明也、穴山文香、小泉遼、笹乃衣春風、瀬戸優、寺尾瑠生、沼田侑香、平山悠羽、フカミエリ、藤原彩芽、前田紗希、ももえ、山ノ内陽介(13組/五十音順)
詳細はこちら

[Informtion]
[主催・運営]
●スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社

・HP:https://www.starbucks.co.jp/
・Instagram:https://www.instagram.com/starbucks_cafe.and.artgallery/

●ArtSticker(運営元:The Chain Museum)

・HP:https://artsticker.app/
・Instagram:https://www.instagram.com/artsticker_app/
・X:https://x.com/artstickerapp

 
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