ユニークな招待制でつながりが広がる『TOKIO ART BOOK FAIR 2026』
~ディレクター黒木晃さんインタビュー~

FEATURE
Edit by Shiritaikun
『TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR』(以下、TOKIO ART BOOK FAIR 2026)のディレクター黒木晃さんに前回からの反響や新しい取り組み、『TOKIO』という名称の理由など詳しくお伺いしました
<ディレクター 黒木晃氏>
編集者。TOKYO ART BOOK FAIR ZINE’S MATE エリアディレクター。2025年より同フェアが新たに立ち上げたTOKIO ART BOOK FAIR のディレクターを務める。アート出版の企画編集、流通に携わるほか、オランダのデザインスタジオStudio The Futureとともに、日蘭の文化交流プロジェクトにも参画。

―黒木さんの経歴について教えてください。

フリーランスで編集・ディレクションの仕事をしています。もともとUTRECHTという渋谷の書店で7年半働いていて、それがきっかけでアートブックの業界に関わるようになり、出版流通のことを学ばせてもらいました。今はアート関連の出版物の編集やイベントの企画、アートブックフェアの運営などをしています。

―イベントを見て気になったのが出展者さんの選び方がすごく独特ですよね。前回、2週末に渡る開催となった『TOKYO ART BOOK FAIR』に出展された約560組中から12組をどのような基準で選出しているのでしょうか。

『TOKIO ART BOOK FAIR』の運営メンバーでセレクションは考えています。
このフェアのフォーマットを考える上で、僕たちが重視しているのは、出版社同士のつながりや、アーティスト同士の協働、本屋を介したローカルなコミュニティなど、アートブックを取り巻くネットワークの存在です。アートブックの領域では、単に自分たちの作品をつくって発表するだけでなく、他のアーティストと共同で制作したり、出版社と書店が一緒にイベントや企画を行ったりと、横断的な活動がとても重要だと感じています。だからこそ、出展者を選ぶ際も、単純に作品や知名度だけを見るのではなく、そうしたネットワークを持ちながら活動している人たちを「ホスト」として選ぶことを意識しています。そうすることで、その人を介してまた別の出版社やアーティストとの関係性が自然に広がっていくのではないかと考えています。

また、参加組数が12組と限られているので、できるだけ一つのジャンルや地域に偏らず、多様な領域の出版社やアーティストが集まる構成にしたいとも考えています。日本国内だけでなく、海外の出版社とのバランスも含めて、全体を見ながら選定しています。一方で、長年ブックフェアを続ける中で、出版社の方たちと個人的に親しくなっていく部分もあります。そうした信頼関係の中で、「この人たちと改めて一緒に場をつくりたい」という気持ちが、選出の動機になることもあります。

ディレクター黒木さん
(TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR, 芝パークホテル)

―確かに、参加されている出版社の多くが出版社の顔だけではなく、ネットラジオを配信していたり、服作りをされていたり、本と違うギャップのある一面も見ることができたので、そういった点を意識されているのかなと感じました。今回が2回目の開催ですが、1回目を受けての変化や意識したことはあるのでしょうか。

全体の企画自体は前回と同じフォーマットを採用したということもあり、コンセプトの部分で大きく変えた部分はありません。前回は最初ということもあり、“『TOKYO ART BOOK FAIR』とは違うフェアが始まる”という不思議な存在みたいなところもコンセプトの一つだったのですが、今回は2回目ということもあり、事前にフェアのコンセプトを伝えていくことは意識しながら進めました。

あとは今回新しい取り組みとして、文房具メーカーのHIGHTIDEによるブランドPenco®さんに協賛いただき、リソグラフ印刷でフェアのカタログを制作できる企画を実施しました。前回に続き今回も、ホストとゲストの出展者同士がお互いを紹介し合うテキストを用意してもらっているのですが、その記録や関係性をきちんと“残るもの”として形にしたいという思いが前回のフェアを終えて強くなりました。だから今回は、そうした紹介文や会場で生まれる体験を、単にWeb上の情報として終わらせるのではなく、“ブックフェア”という場により親和性のある「印刷物」として持ち帰れる形にできないかと考えました。実際に印刷という行為まで含めて参加できる企画にすることは、運営的にも新しいチャレンジでしたが、とても良い取り組みになったと思っています。

―先ほど実際に体験させていただきました!体験の最中にも「新しい印刷ができました!」という風にリアルタイムで更新されていて、すごく楽しかったです!

ワークショップの様子。入り口には見本も。
(TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR, 芝パークホテル)

―1回目はあまり告知はせずとのことでしたが、前回からの反響はどういったものがあったのでしょうか。

毎年、東京都現代美術館で開催している大規模な『TOKYO ART BOOK FAIR』に比べて、TOKIO ART BOOK FAIRの規模感だと出展者全体をじっくり観て回ることができるというのがありましたね。招待制にしたことで全体的にリラックスした雰囲気というか、出展者も知り合い同士で隣り合っているので普段よりゆったりとした気分で出てもらったり、それがお客さんにもいい具合に伝わっていたので良い反響をいただけていたかなと思います。

―たしかに、大きいブックフェアですと回るのに疲れてしまったり、これってどこでもらったやつだっけといった事が発生したりするのですが、この規模感だとゆったりと回ることができて印象もすべて残りますし、やはり横のブース同士で仲良くされていてお互いのブースを紹介してくださって、親しい距離を感じることができるのが楽しかったです。

(TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR, 芝パークホテル)

―『TOKIO』と命名した理由ってなんでしょうか。

アートブックフェアというものが僕個人としてはやはり都市に紐づいているものだと思っていて、国内外から集う来場者や出展者がフェアを通じて、その都市の文化やアートをなんとなく体験していると思うんです。そう考えた時に、『TOKYO ART BOOK FAIR』がもうひとつ東京で新しいフェアをやるときに、やはり「東京」以外の名前がつくのはちょっと違うなと感じていました。
そこから、“TOKYO”を“TOKIO”と一文字だけ変えるというアイデアを思いつきました。
“TOKYO”と“TOKIO”がパラレルワールド的な世界観というか、違う視点から対象をみるという点で、新しいフォーマットを試すフェアのコンセプトも表すのにも適していると思っています。非常に紛らわしい名前なので、ちょっと面倒なことも多いのですが、半分冗談、半分本気のネーミングです(笑)。

―マークがコインなのはどういった意図でしょうか。

コインのモチーフは、昨年に続きアートディレクションを担当いただいているデザイナーの大田拓未さんのアイデアです。アートブックフェアでは、お金で本を買いますが、単に本を売買するだけではなくて、お互いが価値観を交換し合うというか、お互いが信頼を交換し合っているというようなイメージがあるという感覚から、それを信頼を表す架空の通貨としてデザインに落とし込んでくれました。

会場にはフェアのマークでもあるコインのフォトスポットが!
(TOKIO ART BOOK FAIR 2026 by TOKYO ART BOOK FAIR, 芝パークホテル)

―初日なので気が早いかもしれませんが、3回目の開催もすでに考えているのでしょうか。

ぜひ継続して開催したいとは思っています。前回開催を経て、この取り組みの意義をすごく感じましたし、出展者の方たちもすごくいいフィードバックをもらえたので、今回2回目を開催することができました。芝パークホテルさんの全面的なご協力いただいて実現できていますので、今回のフェアを終えてから、改めて次回開催に向けて考えたいと思っています。

黒木さん、お忙しい中インタビューにお答えいただき、ありがとうございました!


【次回開催情報】
第16回 TOKYO ART BOOK FAIR
会期:2027年1月21日(木)~24日(日)、1月29日(金)~31日(日)
会場:東京都現代美術館
公式サイト:https://tokyoartbookfair.com/

[Informtion]
●TOKIO ART BOOK FAIR 2026
https://tokioartbookfair.com/

・Instagram : https://www.instagram.com/tokioartbookfair/

●TOKYO ART BOOK FAIR
http://tokyoartbookfair.com/

・X : https://x.com/tabf_info
・Instagram : https://www.instagram.com/tokyoartbookfair/

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