気鋭のイラストレーター3名が描き出す異なる世界観に触れる
「前田ミック/コタチユウ/さけハラス『景色のなかで ―IN THE LANDSCAPE―』 illustration by 3Artists」

FEATURE
Edit by Shiritaikun
3人展「前田ミック/コタチユウ/さけハラス『景色のなかで―IN THE LANDSCAPE―』」(@丸善・丸の内本店)にて、展示会を楽しみつつ、イラストレーターのみなさんに制作の裏側や今回の展示に込めた想いを伺いました!
<前田ミック>
大学卒業後、広告制作プロダクションのディレクター職を経て、現在は書籍の装画や広告イラストの仕事を手がけている。
光や空気の存在を感じる情景をモチーフにした作品を得意とし、 画集「ILLUSTRATION」掲載や「絵師100人展」にも選出される。
<コタチユウ>
書籍の装画やゲームイラストを中⼼に、個⼈では夏をテーマにした作品を多く制作。リアルな描写と、今にも動き出しそうな⼈物イラストの組み合わせを得意とする。
<さけハラス>
旅するイラストレーター(デジタルアーティスト)として全国を旅しながら日常風景のイラストを制作。広告・装画・背景イラスト制作や講師業などを行う。

気鋭のイラストレーター3名が描き出す異なる世界観に触れる
「前田ミック/コタチユウ/さけハラス『景色のなかで ―IN THE LANDSCAPE―』illustration by 3Artists」

■展示会のテーマ「景色のなかで — IN THE LANDSCAPE —」について

―早速、今回の展示会のテーマが「景色のなかで」ということですが、みなさんが特に好きな景色、シチュエーションを教えてください。

コタチユウさん:作品にも出てると思いますが、やっぱり夏の景色が好きですね。自分の作風というか、描きたいものの中に光と陰のような、日常的な明るい空間の中に少しシリアスなものがあったり、不穏な気配を感じるものみたいな要素に日常で生活していても目がいきやすくて。作品もその両面を描けたらと思っているんですけど、その明るい部分と暗い部分どっちも包括してくれる季節が夏だと思っていて。明るくもあるけど、より影の濃い季節なので描く季節として好きなのは夏の景色になります。

コタチユウさんの作品

前田ミックさん:私はSF、特にサイバーパンクが好きで、未来的な要素というか雰囲気が感じられる景色が好きですかね。都会の街並みとか、開発中の工事現場とかそういうのが好きです。その中で人の暮らしの日常が感じられる部分、そういうのを置いて自分の世界観にしたいなというふうにいつも考えています。

前田ミックさんの作品

さけハラスさん:僕は現実の場面をモチーフにしていて、お仕事とかで実際にその場所を描くこともあるんですけど、普段自分で制作する場合は仕事で描かないような、掘り出し物みたいな場所を探したいなっていうふうに思っています。で、現地に行くんですけど。ちょっとメインの通りじゃない裏路地とか薄暗いとことか。あとは階段で景色が開けているところを見つけた時は結構テンションが上がって(笑)、作品にしようかなというふうに思いますね。場所に行く前に目的はいくつか決めているんですが、それとは別に色々見てみて、見つかったらいいなという感じもあります。

さけハラスさんの作品

―過ごすのと描くのでは違うのかなと思うのですが、過ごす方で好きなのはどの季節ですか。

コタチユウさん:部屋の中の夏が好きです(笑)。外の明かりが明るくて中に影があるという景色もわりと好きなので、過ごすのは部屋の中の夏!外は暑いので(笑)。

前田ミックさん:そうですね。私は秋ですかね。暑くもなく過ごしやすい。
コタチユウさん・さけハラスさん:間違いないですね。

さけハラスさん:好きなのは秋ですけど、絵にするんだったら冬が好きで、やっぱり雪降らせたいなと。
コタチユウさん:確かに、冬の絵もありますよね。
前田ミックさん:ほんとだ~。

―今回の展示会のメインビジュアルである「雨」というテーマはどのように決定されたのでしょうか。

前田ミックさん:開催が6月なので季節感のある、そしたら梅雨とか雨とかかなっていうのと、色を指定して、6月っぽい色合いにしたら、それぞれの個性も出しやすいし、6月感も出せるしっていうことで「雨」と「色」で分けさせていただきました。

コタチユウさん:3人展でメインビジュアルを用意するってなった時に、せっかくだから描きおろしたり、昔の作品の中からとってきたりとかして、統一感のあるもので並べられたらいいなっていう話をご提案いただいて、色々とテーマを出してくださる中から決めました。

それぞれ緑・ピンク・青を指定して描かれた雨がテーマのメインビジュアル

―メインビジュアルの他にも、展示会に向けて描きおろし作品を描かれているかと思いますが、描きおろし作品の内容はどのように決めて制作を進められたのでしょうか。

さけハラスさん:僕の場合は、描きおろしほとんど用意できなくて2つだけ描いたんですけど、展示の直前にイタリアに行く機会があったので、せっかくだったらそれもちょっとグッズにしたいなと思って2作作った感じです。

―1回の旅行でローマからヴェネツィアまで行かれたのですか。

さけハラスさん:そうですね(笑)。

前田ミックさん:素敵~。

前田ミックさん:私は、今回9点描きおろしを作成したんですけど、
コタチユウさん・さけハラスさん:ほんとにすごいです・・・!
前田ミックさん:描きおろしを描いたのも、ずっと仕事の絵を描いてたので、オリジナル作品を描くのが久しぶりだったんですね。なので今回は好きなもの、好きな世界観を描こうとして、少し近未来的な、ちょっとSFチックな絵をと思って描いたのがはじまりですね。さっきの質問でもお話した、未来的な部分の中で実在する乗り物であったり、動植物を入れたりして、私達のリアルな日常から離れすぎないような作品にしようと思ってまとめて描きました。

コタチユウさん:今回展示をしないかってお話を事務所からいただいた時に、私もお仕事の絵を最近結構描いてて、自主制作が久しぶりだったので。ただその間もわりと描きたいものみたいなのをストックはしていて、ラフで描いたりとかメモ帳で文字に残したりしていました。で、多分全部そこからですね。メモを取っていたものとか、昔描いたラフを引っ張り出してきて、今だったらこういう風に描くなとか…。なので結構自主制作できてない期間中にためておいたアイデアみたいなところから今回5、6点くらい描いたって感じで。お仕事で描く機会が多いイラストというのが割と明るめであったり、可愛らしいものが多いので、自主制作で展示もするので、せっかくだから二面性を描きたいという部分もあって、ちょっと暗めな絵も2点くらい新しく描きました。あんまりお仕事で描くテイストでない絵を描いたという感じです。

―角に掛かっている絵とかも暗い感じですよね。

コタチユウさん:思い切り最後に。あれはツツジの絵で、ツツジが背景にがーっと咲いてて喪服の女性がいてっていうイメージだけずっとあったのを練りためて、展示にあわせて固めて描いた感じです。

―みなさんそれぞれ作品にしっかりとタイトルがつけられているかと思いますが、タイトルは描いた後に決定されるのでしょうか。

コタチユウさん:私は描いてというより描く前やラフの段階で決まっていることが多いです。

前田ミックさん:私は描き終わった後ですね。結構テーマ性とか物語を付け加えながら描いてることがあり、最初に思っていたストーリーと描き終わった後のストーリーが変わっていたりもするので、出来上がってからタイトルを付けるようにしてます。

さけハラスさん:僕の場合は、結構ころころと変えてるんですよね。今回Tシャツで商品にするっていうのがあって、それに合うものっていう風に考えたので、ネットに上げる時とかとは多分変わっていると思います。
コタチユウさん:分かります、分かります。

―また共通して、リアルな情景日常描写と幻想的な雰囲気のバランスが魅力的だと感じました!このバランスはどのように作品に落とし込んでいるのでしょうか。

前田ミックさん:うーんそうだなー、私自身背景を描くのが好きなんですね。実在する背景よりも、自分で考えた近未来の世界を考えながら描くのが好きで、その中にキャラクターを立たせる時に、あまりにも背景に沿って近未来的なデザインにするのは私的にはちょっと違うなっていうふうに思っていて。服装、ファッションであったり髪型であったり、あとさっきの質問でも答えたように、実在する乗り物だとかあと動植物ですね、猫ちゃんだとか(笑)、実際にあるお花だとかそういうものを入れてバランスをとるようにしています。

コタチユウさん:キャラクターのバランスと背景の調和感というか、ちゃんとその景色の中にキャラクターが立っている、空間にいるっていうふうにしたくて。作品によって違うんですけど、例えばその背景の中の色をキャラクターとリンクさせたりとか、そういうことで同じ空間だっていうことを伝えやすくしたりとか。あとデフォルメの感じとかで、その…キャラクターの、絵だけどどっちも景色の中に、同じ空間にいるということを意識してますね。

さけハラスさん:僕の場合は写真を撮ってそれを加工しているんですけど、写真の状態だとノイズというか情報が多すぎるとこがあると思うので、そこを削ってキャラクターを置いた時に合うところを探すみたいなイメージで進めてます。

キャラクターを置いて、背景を作るというイメージですか?

けハラスさん:そうですね置いてみてやる時もあれば、背景作ってしまってから後でキャラクターを置いて、みたいな時もあります。 背景が細かかったりすると、キャラクターも細かくしすぎると埋もれちゃうのかなと思って。

■お互いの作品への印象

―お互い展示会の前からもともと交流関係があったのでしょうか。

コタチユウさん:私は無いんですよ。ただ、私が事務所に入ったのが一番遅いんですけど、入る際にどういうアーティストがいるっていうのは話を聞いたり見ていたりしていて。その時にテイストが近いというか、世界観を共有できそうだなと思っていた、名前を挙げたお2人だったので、今回事務所の方から「この3人で展示を」とお声がけはいただいたことに、多分そうなんですけど(笑)、勝手に一方的に縁を感じているお2人です。

前田ミックさん:SNSではね、数年前から交流があったんですけど、こうやって対面でおしゃべりしたのはコタチさんは初めてで、さけハラスさんはもう5年以上前に展示でお話してってくらいだったので、今回久しぶりに会ってという感じでしたね。

今回展示をするのも、1番最初にお話しいただいたのが私で。その時にお2人とやりたいって希望を出していたので、今回3人でできてすごくうれしいです。
コタチユウさん・さけハラスさん:そうだったんですね~!初めて知りました。
前田ミックさん:実はそうなんです(笑)。

―さけハラスさんは今回お2人と展示会をすると決まった時の心境いかがでしたか。

さけハラスさん:それこそお2人のご活躍はSNS拝見してて、本当にすごく尊敬してて、そこと肩を並べて3人で、というふうにさせていただく時に、最近自分が創作活動できてなかったので、今回も2点だけなのでせめてなんかちょっと変わったことしたいなと思ってTシャツにしました。(笑)
コタチユウさん・前田ミックさん:めちゃくちゃいいです!かっこいい。
さけハラスさん:やってみたかったってのもあるんですけど、結構載せたい絵とかもかなり古いものとかもあって、2019年とかに描いたものとかもあるのでそういった絵とかでカバーしようかなと
前田ミックさん:懐かしいのありますよね。

―お互いの描きおろし作品の中で特に気に入ったものを教えてください。

さけハラスさん:めっちゃ悩んだんですけど、新作の中でいうと、2人のメインビジュアルの作品がそれぞれやっぱすごいなと思って。カラーだけ指定して、雨っていうテーマでピンク系・緑系・青系のものというふうに話し合って決めて、その上で僕は新たには描いてないんですけど、お二人は描かれてきて。

前田ミックさんのは、自分が雨のテーマでピンクっていうお題を出されたら正直何も進まなかったかもしれないと思って、少ない期間の中でまとめられて、しかも難しい構図でご自身のアイデンティティでもある近未来的なところも含まれてて、半透明のモチーフとか色々と難しいものも詰まっていて、それをこのテーマで、ほんとすごいなと。

さけハラスさんが選んだ前田ミックさんの作品

前田ミックさん:うれしい。ありがとうございます。

さけハラスさん:すごく好きですね(笑)。コタチさんの方もテーマとかイラストとかめちゃくちゃ好きです。雨っていうものももちろん好きですし、一見薄暗い構図ではあると思うんですけど、でもやっぱりキャラクターもちゃんと目立ってるし。書き込みもすごい大変だと思いますがそれでもストーリーが伝わるし、描きたいものが入ってきて、いいなと思いました。

さけハラスさんが選んだコタチユウさんの作品

前田ミックさん:そうですね。さけハラスさんの作品…今回新作で普段、さけハラスさんは日本の風景を描かれるイメージが強いので、まず、海外の風景を描かれている!というところで新鮮で、ヴェネツィアの作品とか、私も路地が好きなのでああいう暗い中で、空を光で区切っているような、そういうのが好きなのでやっぱりあの作品が一番好きですね。

前田ミックさんが選んだコタチユウさんの作品

コタチさんの作品だと、いつもの爽やかで明るくて穏やかなイメージが強かったので、やっぱり『激情』(ツツジのイラスト)が好きですね。コタチさんの違うイメージが見れた感じがして、結構どきりとして惹きつけられました。

コタチユウさん:さけハラスさんの描きおろし路地の市場の方(ヴェネツィアのイラスト)、私もそう、外国の風景描かれていると思って、すごい新鮮だったのと、作品拝見してご自身が行かれたところを描くという話をされてた時に、私も路地好きで(笑)、市場とかああいう軒下に生活感があるモチーフが好きなので、確かにこういうところ選びたくなるというか、非常に描きたくなる場所への共感というのがすごくあって、お気に入りですね。

前田ミックさん・コタチユウさんが選んださけハラスさんの作品
コタチユウさんが選んだ前田ミックさんの作品

前田ミックさんの新作の絵の中で、窓を眺めてる女の子の絵が好きなんですけど、雨のテーマで今回描きおろしをされてますが、近未来さと日常の融合感というか、自分や似ている人たちも共感を持てるけど少し未来的なアクセントがあって、すごく素敵だと思っていて。雨のテーマでオレンジ色が差し色になっているのもすごく綺麗だと思います。あと前田ミックさんの描写が全部細かくて素敵です!窓の水滴とかもすごく素敵です。

―今回の作品はそれぞれ会場に来て初めて目にされたのでしょうか。実際目にして「そうきたか!」などの驚きはありましたか。

前田ミックさん:そうですね、やっぱり私はコタチさんのダークな作品がええ!って思ってそれが新鮮で嬉しかったというのがありますね。

コタチユウさん:作品を共有のLINEとかであげてはいたんですけど、見ないようにしていて(笑)。ここ来て見たんですけどやっぱりみなさんの幅の広さというか、お2人とも本当に繊細な描写が魅力的な人なんだなって、こういう展示で改めて見ると伝わってくるなというのが第一印象でした。

さけハラスさん:そうですね。重なってしまうんですけど、前田ミックさんの作品は展示で大きな画面で見るからこそ見応えがあって、携帯とかの画面で見てても、こういう風に描かれてたんだって水滴とか、細かなとこまで展示で見れるのはいいなっていう。コタチさんの方もタッチがアナログっぽい感じ、筆の感じが分かるのでキャンバスとかとすごい合ってるなと。見た時にえ?これアナログ?って思ったりもしたくらい(笑)、展示ならではというか、新作を見た時も夏っぽい絵を描かれるイメージが確かにあったので、そこでおっ!って感じました。

それぞれ似ているようで異なる個性・魅力を持つみなさんですが、お互いの作品をリスペクトしあう関係性が素敵で印象的でした。 展示とインタビューを通して、その作品世界を存分に楽しむことができたひとときでした!

前田ミックさん、コタチユウさん、さけハラスさん、このたびは貴重なお時間を本当にありがとうございました!


【展示会情報※本展示会は終了しました※】

「前田ミック/コタチユウ/さけハラス『景色の中で ―IN THE LANDSCAPE―』illustration by3Artists」
会場:丸善・丸の内本店 4階 ギャラリーA
会期:2026年6月3日(水)~6月9日(火)
9:00~21:00(最終日は16:00閉場) ※入場無料

[Informtion]
●前田ミック
・X:https://x.com/m_mic_0707
・Instagram:https://www.instagram.com/m.mic.0707/

●コタチユウ
・X:https://x.com/kotatiyu
・Instagram: https://www.instagram.com/kotatiyu/

●さけハラス
・X:https://x.com/hunwaritoast
・Instagram:https://www.instagram.com/sakeharasu/

[主催]
●丸善・丸の内本店
https://honto.jp/store/detail_1572000_14HB310.html
・X:https://x.com/maruzen_maruhon?lang=ja

[監修]
●アソビシステム株式会社
https://asobisystem.com/

[企画・制作・運営]
●株式会社ArtGo
https://artgo.co.jp/
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