老舗文具メーカーLIFE ~ものづくりの理念と職人技術がこめられたヒット商品「ノーブルノート」の裏側~

FEATURE
Text by Hitomi Iida Photo by Ayumi Koseki

工程4.折り

折り作業。左側の添え木が一定のリズムで動いているので、その動きに合わせてノートを機械に差し込んでいきます。

長山さん:
次は折りの工程です。ノートの片面を表紙が見えるようにめくり、表紙側から折り機に入れて、1回目の折りが入ります。そのまま機械の中で下から突き上げられるようにしてローラーを通り、2回目の折りが入ります。

折り機に入ったノートが下の方に移動し、最後にローラーを通って折り目が付けられます。
(今回特別にカバーを開けて、作業を見させていただきました。)

ここで私たちもノートの折りを体験させていただきました!
ノートを差し込むタイミングを掴むのが難しく(例えるならば長縄跳びに入る時のような感覚でしょうか…)、かなり四苦八苦しましたが、機械を通ったノートは無事きれいに折られていました。
これを、間を置くことなく進める職人さんの技のすごさを、改めて実感しました…!

年季の入った折り機。

―折りの強さはどのくらいなのでしょうか。

長山さん:
力の単位でお答えするのは難しいのですが、上下のローラーで挟み込まれるときに、強すぎると紙が皺になってしまうし、弱すぎるときちんとした位置で折れないので、ローラーの高さを上げ下げして挟み込む力を調節しています。また、ローラーの接触が左右で異なると斜めに折られてしまうので、バランス良くなるように調節します。この機械は50年ほど経っていて、一度バラしてしまうと戻すのが大変なので、常に同じ形で折れるようにデータ取りしています。

山田さん:
この段階は正しい位置で折るためのガイドラインのような工程で、次にプレスしていきます。通常2人で作業をしているので、折りとプレスは流れ作業で一気に取り掛かります。

工程5.プレス

プレス機で通す時のタイミング、どの程度スライドさせるかは長年の感覚によるもの。ちなみに工場は1階にあるのですが、プレス機の音は3階の事務所まで聞こえるようです…!

長山さん:
プレス用の機械は力の値が決まっていて、約2トンの力がかかります。また、プレスするために上下に動いている部分の面は平らではなく台形型に膨らみがあります。膨らみが当たる部分に一番強い力がかかるので、そこに当たるようにしてノートをプレスしていきます。2回目のプレスでは、表と裏を合わせて、1回目よりも強い力でプレスしていきます。固定されている土台の高さを変えることで、プレスされる力を調整しています。

左がプレス前、右がプレスしたもの。

工程6.背固め・切り離し

背固めしたもの(左)/薄ピンク色の帯状の部分が補強用和紙(右上)/背固め用の刷毛(右下)

山田さん:
プレス後、重石を乗せて一晩寝かせます。その後、背固めの工程に入ります。ノートの背を金槌などで整えてから、背表紙に製本用の刷毛で糊を塗ります。刷毛は豚毛のものを使用していますが、製本用の糊は洗っても完全に落ちないため、毛先が固まってきたら新しいものに交換しています。糊を塗ったら、背表紙の真ん中に薄(うす)と呼ばれる和紙を貼ります。断裁の際に背表紙が潰れるのを防ぐため、補強として貼り付けています。
ちなみに今回はA5サイズなので、この背固めしたひとかたまりでだいたい3キロくらいあります。ノートのサイズが大きくなるとさらに重くなるので、運ぶ時にかなり腰にきます(笑)。

長山さん:
糊が完全に乾いたら、メスという道具(大きなペーパーナイフのようなもの)を使って、ノートを一冊ずつ分けていきます。力加減やメスを入れる角度、ノートとノートの境目に気を付けながら、割いていきます。
ということで、やってみましょう!(笑)

ここで再び割く作業も体験させていただきました。
長山さんや山田さんはバターを塗るように滑らかにノートを分けていましたが、見るとやるのとでは大違いでした…。想像以上に力が必要で、ノートを傷つけず、かつ間違った位置で割かないよう細心の注意を払いながら恐る恐る挑戦させていただきました。後半は少し慣れてきて、無心でノートを分けていました(笑)。

割く位置を間違えないようかなり慎重に確認している取材スタッフ。

工程7.背表紙へのクロス貼り

糊が入っている場所(左上)/ミシンの上糸をセットするようにクロスをセットしてきます(左下)/白い帯状のものがクロス。(右)

長山さん:
次はクロス貼りです。機械の下に糊を入れる部分があり、固まらないよう常に攪拌しています。この糊の容器のローラー部分にクロスを通して、機械にセットしていきます。まずはテスト用のノートを数冊通して、クロスの貼り付けが安定してきたら、ノートを入れます。クロスを通す幅は進行方向に合わせて徐々に細くしてあり、最終的にノートの背表紙を包むようにクロスが貼り付けられます。

―このテープは距離を測って切られているのですか?

山田さん:
センサーで赤い光が照射されていて、そこが安定したノートの隙間で切られるようになっています。この数字がセンサーの設定値で、表紙の反射率(光を当てた時の値と、何も通してない時)の値差で設定してあります。
出てきたノートはクロスの太さを確認しつつ、一つ一つ手で背表紙をならしていきます。

―細かいところは人の手で行っているのですね。

左からノートをセットしてクロスを貼り付けていきます。

長山さん:
機械と一緒に作っている感じですよね。機械任せではなく、人の手と人の目がないとできない製本なので、大量生産が難しいです。

工程8.化粧落とし(完成)

手際よく化粧落としをする長山さん(左・右上)/断裁時の圧力で背表紙の角が少しよじれた状態(右下)

山田さん:
クロス貼りしたものは30分ほど糊を乾かす必要があるのですが、今日は事前にクロス貼りを終えたものをご用意しました。

(取材のために時間を置いたものをご用意してくださいました…!)

長山さん:
化粧落としと言って、最後にノートの天・地・小口(背表紙以外の3か所)を切り落として完成となります。今は2冊縦につながっている状態なので、小口を断裁した後に、半分に切ります。背固めの時に補強用の和紙を貼りましたが、それでもかなり強い力で断裁されるので、クロスが少しよじれています。この後、天と地を断裁して断面をきれいにして完成です。
完成したものは、キャラメル包みにしてお店に出荷されます。

ついに完成しました!

取材を終えて

―ノートが完成するまでにトータルでどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

山田さん:
普段は2000冊単位で作っていて、製本にかかる期間は乾燥などの寝かし時間も含めて4日ほどです。
2種類は並行で作っていて、寝かしている間に他の作業をするなどスケジュールを組んでいます。

二人三脚でノーブルノートを作られている長山さん(左)と山田さん(右)

歴代の職人さんから技術を受け継ぎ、現在は長山さんと山田さんのおふたりが工夫を凝らし丹精込めて作っています。おふたりの巧みな技術によって出来上がったノーブルノートは、国内での人気はもちろんのこと海外でも高い評価を得ています。

製本の様子を拝見し、よりノーブルノートが好きになりました。

長山さん・山田さん、取材をセッティングいただいた南井さん・小野さん、LIFEの皆様、お忙しいところありがとうございました

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