マルクス・ハイニッケ氏(EDEL/Berlin Classics)イェローン・ブルーデンヒル氏(Brilliant Classics)インタビュー
ベルリンを拠点とする音楽レーベル。クラシック音楽を中心に、優れたアーティストやオーケストラの作品をリリースしている。高品質な録音や独創的な演奏スタイルで知られ、幅広いジャンルや時代の作品を幅広いリスナーに提供しています。
<BRILLIANT CLASSICS>
クラシックを中心にジャズ、ポップスなど様々なスタイルのアーティストや音楽ジャンルの作品をリリース。優れた録音技術と独自のアーティストネットワークにより、質の高い音楽体験を提供しているレーベル。
本日は、ようこそJPTへお越しくださいました。では、はじめにお二人の自己紹介をお願いします。
こんにちは、マルクス・ハイニッケです。ドイツから来ました。私はドレスデンでドイツ文学、哲学や歴史学を学んだ後、ジャーナリストとして文化分野で働き、オーディオ・ビジュアルメディアやテレビでクラシック音楽を広める「アルトハウス・ミュージック(Arthaus Musik)」のプロダクト・マネージャーおよびA&Rを担当しました。2015年には、ドイツのエンターテインメント会社「エーデル(Edel)」に入社し、ベルリン・クラシックスのアーティスト&レパートリー部門を担当しています。5年以上にわたってクラシックのヘッドを務め、2022年からはエーデル・クルトゥーア(Edel Kultur)のクラシック音楽のディレクターを務めています。
イェローン・ブルーデンヒルです。オランダ出身で、ユトレヒトで音楽学を学び、カペラ・アムステルダム、オランダ・バッハ協会、ボーカル・アンサンブル「ザ・ジェンツ」など、多くのセミ・プロの合唱団に参加しました。25年以上前にEMI Music Classicsで音楽ビジネスに携わって、その後、オランダの音楽専門商社であるベルタス社(Bertus)でクラシック部門の責任者を務めた後、2011年にブリリアント・クラシックスにセールス&マーケティングマネージャーとして入社し、2022年8月よりマネージング・ディレクターを務めています。
それでは、まずマルクスさんからお伺いしたいと思います。ベルリン・クラシックスについて、歴史や特徴を教えてもらえますか。
ベルリン・クラシックスは、ベルリンのクラシック音楽レーベルで、さまざまなアーティストやアンサンブルの音楽的活動のサポートをしています。ラグンヒル・ヘムシング、シモン・ヘーフェレ、ソフィー・デルヴォー、フェリックス・クリーザーといった新進気鋭の音楽家から、ラグナ・シルマーからクリスティアン・カルグ、ルネ・コロからルードヴィヒ・ギュトラーといったキャリアのある音楽家たちが所属しています。
また、カメラータ・ザルツブルク、コンチェルト・ケルン、スパーク、BBC交響楽団、イル・グスト・バロッコ、トロンハイム・ソロイスツ、モーツァルテウム管弦楽団、WDRシンフォニーオーケストラ、ウィーン交響楽団、ベルリン交響楽団など、一流のアンサンブルやオーケストラとのコラボレーションは、レーベルの優れたレパートリーの豊富さにあらわれています。
1993年に設立されたベルリン・クラシックスは、旧東ドイツ国営のエテルナ(Eterna)レーベルの膨大なカタログを継承し、設立当初から新譜のプロモーションとリリースだけではなく、継承した80年にわたる歴史録音のアーカイブ保持にも力を入れてきました。また、13世紀から21世紀までの西ヨーロッパ音楽のほぼすべての楽曲の音源を所有しています。
ベルリン・クラシックスから、おすすめのアルバムをご紹介いただけますか?
非常に難しい質問ですね。(笑)
過去数十年にわたり、最初はエテルナ・レーベルから、次にベルリン・クラシックスから、200以上のタイトルをレコーディングしリリースしてきました。カタログにはまだ800近くのアクティブなアルバムタイトルがあります。 古いものでは、ペーター・シュライアー、ドレスデン聖十字架合唱団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団とのバッハの「クリスマス・オラトリオ」は伝説的な録音があり、毎年クリスマスシーズンには高い需要があります。(BACH: CHRISTMAS ORATORIO, BWV 248) カタログで最も売れている録音は、おそらくテナーの“ペーター・シュライアー”とトランペッターの“ルートヴィヒ・ギュトラー”によるものです。
●J.S.バッハ:クリスマス・オラトリオ BWV.248
ドレスデン聖十字架合唱とドレスデン・フィル、ソリスト達が織りなす心温まる名演。フレーミヒ率いるドレスデン聖十字架合唱団の透明感溢れるサウンドは「バッハ:クリスマス・オラトリオ」の決定盤として長く愛されております。
(JPT CLASSICS 澤野)
最近では、フランスのファゴット奏者“ソフィー・デルヴォー”(Sophie Dervaux)の 3 つのレコーディングが挙げられると思います。彼女は、有名なウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の最初の女性ソロ・ファゴット奏者です。 最近では、ヨハン・クリスチャン・バッハのファゴット協奏曲とミヒャエル・ハイドンの変ロ長調交響曲がベルリン・クラシックスからリリースされました。 ソフィーはソリストとして、また、指揮者としてキャリアを積んでおり、日本でも両方のポジションでコンサートを行っています。 現在、彼女はアントニオ・ヴィヴァルディのファゴット協奏曲全集の録音に取り組んでいます。
また、この10年間のベルリン・クラシックスにとって非常に重要なアーティストはホルン奏者の“フェリックス・クリーザー”(Felix Klieser)です。
プロのミュージシャンとしては世界でも類を見ない存在です。彼は生まれつき腕がなく、つま先で楽器を演奏しています。 カメラータ・ザルツブルクとのモーツァルトのホルン協奏曲の彼の録音は本当にいいんです!フェリックス・クリーザーは何度も日本に来ており、日本の皆様には広く知られていると思います。
●モーツァルト:ホルン協奏曲全集から
ホルン協奏曲第3番 変ホ長調 K. 447
第2楽章 ロマンス:ラルゲット
フェリックス・クリーザーが長年の研究と演奏を振り返り、作曲者モーツァルトに最大限の敬意を払いながら挑んだ待望のアルバム。モーツァルトの音楽に精通しているカメラータ・ザルツブルグとの共演も相まって、モーツァルトの無限の音世界へ誘う一枚となっています。
(JPT CLASSICS 澤野)
これからどのような活動を予定していますか?
私たちは、アーティストの育成とアルバムの制作に力を入れ続けています。つまり、アーティストのキャリアを伸ばし、ディスコグラフィーを構築し、拡大することで、商業的な観点からも共に成功を収めたいと考えています。成功したアーティストは、メディアのスポットライトを浴びて、より多くの人々に知られるようになるはずです。ベルリン・クラシックスは、何よりも、エキサイティングなコンセプト・アルバムや驚くべきプロジェクトで、クラシックファンを魅了し続けたいと思っています。 また、レーベル「ノイエ・マイスター」では、クラシック音楽を核としながらも、さまざまなジャンルの混合を受け入れる若いターゲット層にもアプローチしています。ヴィヴァルディのファゴット協奏曲やベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタを含む全曲録音などの大きなプロジェクトは、ベルリン・クラシックスをクラシック音楽全般の中核に位置づけることになると思います!
マルクスさん有難うございました。続いてイェローンさんにも同様にお聞ききしていきたいと思います。ブリリアント・クラシックスの歴史や特徴を教えていただけますか。
ブリリアント・クラシックスは、オランダのレーワルデンに拠点を置くクラシック音楽レーベルです。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンやウォルフガング・アマデウス・モーツァルトなど、多くの作曲家の作品全集を、リーズナブルな価格でCDボックスとして販売していることで知られています。「J.S.バッハの作品全集(155枚組)」は全世界で50万セット以上のセールスを記録し、今尚、記録を更新しています。
また、ブリリアント・レーベルはピリオド・インストゥルメント(古楽器)の盛んなオランダならではの、ピリオド・インストゥルメントを使用した、多数の作品の録音を行ってきました。レーベルの芸術監督は1995年の設立当初より、ピアニストでレコード・プロデューサーであるピーテル・ファン・ヴィンケルが務めており、クラシック・ピアノ音楽に特化した専門レーベル「ピアノ・クラシックス」も持っております。また、2012年には、ドイツの独立系エンターテインメント・グループであるエデル・グループの傘下に入り、欧州のクラシック音楽産業の一端を担っています。
ブリリアント・クラシックスから、おすすめのアルバムをご紹介いただけますか?
バッハをお薦めしますが、中でもエリック・ボスグラーフによるアルバム(Bach: Concertos for Recorder, Vol. 2)をお薦めします。
バッハは、その生涯を通じて、リコーダーのために、他のあらゆる楽器と同様に、独創的かつ慣用的に作曲しましたが、この楽器がスポットライトを浴びる協奏曲を残していないんです。そこでボスグラーフらは、もしバッハがリコーダーのための協奏曲を書いていたら、どんなことをしただろうか、あるいはできただろうか、という問いに答えようと試みました。このアルバムでは、ヨハン・セバスチャン・バッハ:コラール前奏曲「おお人よ 汝の罪の大いなるを嘆け」BWV.622を聴くことができます。
これはもともとオルガンのために書かれ、現在は小さなバロック・アンサンブルとエリック・ボスグラーフのリコーダー用に書き起こされました。エリックが奏でるコラールのカントゥス・フィルムス(定旋律)と、それに付随する弦楽器や通奏低音のハーモニーが、本当に素晴らしいんです。また、同じアルバムに収録されたイースター・オラトリオ(TR5 : Johann Sebastian Bach: Adagio in B Minor, BWV 249/2, Easter Oratorio)のパートも同じような雰囲気を醸し出していて、本当にお薦めなんです!
ブリリアント・クラシックスの今後の活動についても教えていただけますか。
ブリリアント・クラシックスは、クラシック音楽市場で唯一の本物志向の廉価盤レーベルで、引き続き興味深い特別なレパートリーや知られていない作曲家、アーティストに焦点を当てていきます。バロックや古典派に加え、グラス、アダムス、エイナウディ、アルヴォ・ペルトなど、ピアノのためのミニマル・ミュージックも積極的に探求しています。さらに、モンテヴェルディ、ボッケリーニ、ショパン、アルビノーニ、ジェミニアーニ、ナルディーニ、マルトゥッチといった作曲家集の新バージョンを数年後に制作する予定です。
また、日本人ヴィオリストの木村理恵、ピーテル・ヤン・ベルダーと彼のムジカ・アンフィオンとの共演でブクステフーデの室内楽全集を録音する予定です。また、CD付きの本や、レンブラントや同時代のオランダの黄金時代の芸術作品の素晴らしい絵画など、パッケージ商品に取り入れることにも力を入れたいと考えています。クララ・ヴィルツ、エリック・ボスグラーフ、ユエン・シェン、エカテリーナ・リトヴィンツェヴァ、イェローン・ファン・フェーンといった世界トップクラスのミュージシャンとの協力も大切にしています。
さらにピアノ・クラシックスでは、フランス、スラブ、ドイツ、イタリアなど、さまざまな地域のピアノ音楽を収録した10枚組のボックスセット「ピアノ・エクスプローラー」シリーズをリリースする予定です。また、ドラ・ペジャエヴィッチなど、女性作曲家の作品も多く収録する予定です。
ありがとうございます。最後に、お二人に今回の日本の滞在についても伺いたいと思います。
日本はいかがですか?
マルクスさん:初めての日本で、ビジネスのためではありますが、東京は刺激的ですね。
イェローンさん:過去にコンサートで歌うため来日したことがあるので、今回で3回目になります。以前と変わっていることも変わらないこともありますよね。
ビジネスパートナーとしてJPTはどのような印象ですか?
マルクスさん:フレンドリーで、協力的で素晴らしいと思います。新しい商品を製作したり、日本に合わせた商品を考えたり、一緒に働いていて非常に楽しいんです。
イェローンさん:私たちも同じで、既にブリリアント社とJPTは長い付き合いですし、お互いが有益な関係であると思います。JPTからは市場の知識やアイデアをもらっていますし、JPTは我々にとっての大切なお客様でもあります。私たちにとって日本は今後も非常に重要なマーケットです。またJPTからはクラシック音楽への愛も感じます。そんな人たちと一緒にさらに多くの商品を創ったり、イベントを協力して行ったりしていきたいと思っています。
我々JPTも、ベルリン・クラシックス、ブリリアント両社ともに、今後も丁寧にプロモーションしていきたいと思っています。今回は、インタビューのお時間をいただきありがとうございました!!
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