
日本の子どもが英語好きになるには?~子どものための英語教育に寄り添う出版社『mpi松香フォニックス』~【前編】
株式会社mpi松香フォニックスは、日本の全ての子どもたちが世界市民として他の様々な文化の国の人と友好的に共生・共感するための国際共通語である英語とそれを使うためのユーモアやコミュニケーション能力を身につけることができるよう、
「子ども」 「英語の先生」 「保護者」
をサポートすることをミッションとする英語教材の出版社。
「子どもは未来からの留学生です。」というキャッチコピーを掲げ、常に変化していく世界の中で、日本の子どもたちのために何が一番必要かを見極め、出版・教育・情報の分野で常に発信を続けている。
きっかけは留学先で知ったフォニックス
―まずは御社のご変遷についてお聞かせください。
竹村社長:
弊社は46年前に創業した会社になります。創業する5年ほど前に創設者の松香洋子が5歳と3歳の子どもを連れてアメリカに留学しました。現地校に通う子どもたちがフォニックス(phonics)を学んでいることを知り、「あ、これを日本に持ち帰って、この方法でもっともっと日本の子どもたちが英語を話せるようにしてあげたい」と思ったのがきっかけで、帰国後に前身の松香フォニックス研究所を立ち上げました。当時、松香は私立高校の英語教師をしており、私の恩師だったんです。
―そうなんですか!
竹村社長:
そうなんです。彼女が日本に戻ってきた時に、一度高校教員に戻ったのですが、受験が中心の英語教育に限界を感じ、スパッと学校を辞めて、自宅で英語の教室(松香フォニックス研究所)を仲間と開きました。最初は海外の英語教材を使っていましたが、やはりネイティブ向けに作られている教材や指導法は、学習環境の違う日本の子どもたちには適さない一面があることがだんだん分かってきて、日本の子どもたちに適した英語教材の制作、出版も始めました。また、全国の先生たちにもっとフォニックスを指導する方法を伝授したいということで、1983年にはmpi全国研究会を立ち上げました。実はちょうどその頃、私が松香の元へたまたま引っ越しの挨拶に行ったんですが、松香から「明日から働かない?」と言われて(苦笑)、それがきっかけでアルバイトのような感じでmpiに入りました。
それから、教室をやりながら指導者育成のために全国各地でセミナーを開催する一方で、弊社のメソッドに合う、また日本の子どもたちにとってより良い教材を作っていこうということで、10年過ぎてからは出版にも注力してきました。弊社の教材制作の特徴は、教室の子どもたちや講師から「こんな教材が欲しい」という声を当時から教材開発に反映させているところです。また試作の段階で子どもたちにトライアルしてもらい、「これは反応が良いな」とか、「こういう風にした方が良いな」とか試行錯誤して、徐々に教材ができあがります。最初の20年ほどは松香の自宅の横のアパートの1階部分を教室、2階部分を事務所として使い、教材を全国に発送する、セミナーの準備をする、教材開発をするなどをやっていました。その後、25周年を記念して事務所を新宿に移し、現在も出版を中心に子ども英語指導者の養成、英語教室運営の3つを柱に事業をしています。

―なるほど。
竹村社長:
普通、出版社と聞くと、どこかの偉い先生が書くと思われる方が多いと思いますが、弊社は全国に500名弱いるmpiパートナー会員の教室の子どもたちにトライアルをしてもらい、結果が良かったものを出版しています。とにかく実践ありきでずっとやってきたので、その点は他社と違う点だと思います。
例えば、1983年に出した『Let’s Study Phonics 1-4』というフォニックス教材があります。普通、出版から40年近く経っているものは数回の改訂版が発行されるのが常ですが、このシリーズは当時のまま販売を続けております(※一部単語の入れ替えなどはいたしました)。今も熱狂的なファンがいてくださることを大変ありがたく思っています。
―1983年!書籍で40年以上っていうのはすごく長い歴史ですよね。
竹村社長:
ありがたいことに今も売り上げの上位に位置する教材の1つなんです。
ターニングポイントを迎えたのは2000年ごろですね。創業から20年近く経ち、民間の英語教室向け中心に様々なジャンルの教材も作り、大手企業と英語教室の共同運営なども経験しました。その過程で“英語のできる15歳”と9年間のカリキュラム(現 mpiメソッド)の土台ができあがりました。同時期に弊社の教材を公立中学校でも採用していただける機会があり、それまでは販売先が民間の英語教室だけだったのが、一気に公立の中学校、小学校と広がっていきました。
2014年には自治体の事業で『DREAM』と『SWITCH ON!®』という小学校英語用のDVD教材を作らせていただきました。まだまだ小学校英語が手探りだった時代でしたが、自治体からは「小学校の先生たちが負担感なく使え、子どもたちがバランスよく英語を学べる動画教材を作って欲しい」ということで、音声インプットが中心の教材を作りました。担任の先生がファシリテーターになって、子どもたちに適宜声を掛けながら、先生も児童も一緒に学べるものを作ろうということで、1年半かけて、制作と教員研修を同時にしながら作り上げました。現在、全国で約1800校がこの『SWICH ON!®』を使ってくれています。このプロジェクトが公立の小学校英語に関わる大きなターニングポイントだったかなと思っています(尚、現在はDVDではなく、サーバー配信に仕様を改訂しています)。
―時代に合わせて展開されているんですね。
竹村社長:
はい。あとは、別の自治体でも小学校英語のお手伝いをさせていただいていて、“3年間で英語のできる子どもたち”ということで、コンサルタントとして色々とアドバイスしたり、カリキュラムも提案しました。
また大手塾と組んで個別学習用のeラーニング教材も作らせていただきましたね。子ども英語が専門ではない塾の先生が指導されても、一定の学習効果が出るカリキュラムをご提案させていただきました。このプロジェクトは小学校英語教材制作での経験が大いに生きました。
―今のお話を聞くと、やっぱりカリキュラムを提案されるノウハウをすごく構築されてるんですね。
竹村社長:
弊社のカリキュラムには、幼児期には音声を中心にとにかくたくさんの音を聴いて、体で感じる音声獲得期、フォニックスを学ぶ文字学習期、自己発信してゆく総合学習期、と3つのステージがあります。また、その各ステージに適した教材と指導法からなる約9年間のmpiメソッドがあり、世界の同世代と共通の話題でコミュニケーションができる“英語のできる15歳”を育てるをゴールに設定しています。

“日本の子どもたちに合った”教材づくりへのこだわり
―やっぱりキーワードとしては、小さい頃から教育されていくところが大切なのかなと感じました。近年英語教育の早期化ということで、小学校でも英語が義務化されてしまったりというところがあると思うのですが、幼いうちから英語を学ぶというところで、商品作りや販促で大切にしていることはありますか?
竹村社長:
日本の英語教育って、ずっと長いこと試験、受験のため、テストに受かるための英語でした。(そしてそれは現在進行形でもあります)。試験のために、丸暗記してみんな忘れちゃう、使う(コミュニケーション)ための英語じゃなかったんですよね。母語で考えていただくと分かりやすいと思うのですが、お母さんが自分の子どもにことば(日本語)を教える時に、文法を教えたり、急に読ませたりしませんよね。歌を歌ったり、お話を読んだりを繰り返して学ぶじゃないですか。同じように英語も、幼児期は体感したり一緒に音声を聴くということがすごく重要なんですね。英語教室に行かなくても、お母さんが1日5分でもいいので英語の歌を一緒に聴いたり、英語の絵本をCDを流しながらお子さんと一緒に楽しんで聴いていただくとか、そういうのでも十分効果があるかと思います。年齢に合った英語の音声に楽しく触れるのは小さいうちからでも問題ないと弊社は考えています。よく母語が乱れることを心配される方がいらっしゃいますが、日本で暮らし、ご両親の母語が日本語の場合は、そのようなことは起こりません。
―とにかく触れていくことが大事ってことなんですね。
竹村社長:
そうなんです。実際、日本ってテレビをつけると全部吹き替えで日本語になっていますけど、ヨーロッパとかに行くと英語はそのまま流れていて、普段から英語が流れている環境で育っていることが多かったりするんですよね。残念ながら日本では、なかなか聴く機会や触れる機会が少ないのが現状です。だから英語って勉強しなきゃいけない=面白くないとなりがちで、楽しいっていう時期がとても少ないことが課題だと感じています。幼児期の、楽しいと思える時期に英語に触れると、お子さんは英語が好きになっている、そこがすごく重要なんです。やっぱり文法から入ってしまうと面白くないですよね。

―そうですよね(笑)。
竹村社長:
すごく良い発音のお子さんとか時々いるじゃないですか。子どもの時はやはり耳がいいので、英語をよく聴いていると、その通りにまねできる力を持っています。そういう意味での幼児期の英語っていうのはすごく重要と考えています。
―今のお話を聞いて、最近おうち英語に取り組んでいる家庭があるかと思うんですけど、御社でもおうち英語に対しての取り組みをされていますか?
竹村社長:
『子どもと英語 増補改訂版』っていう本でも書いていますが、お家でやる場合は環境が大事です。お母さんやお父さんが英語を教えるのではなくて、一緒に歌を聴いたり、歌ってみたりと親が一緒に楽しむことがカギです。小さいうちは、お子さんの好きなDVDを英語で見せるとか、車に乗っている時に英語の歌を聴くぐらいで十分なので、親子で楽しんでほしいと思っています。保護者の方からご相談があった場合は同様にお答えしています。
─お子さんと一緒に繰り返し英語の歌や絵本に触れていくことが大事になるんですね。
竹村社長:
今、たくさんの英語教材が販売されていますが、弊社は日本の子どもに合ったものっていうところで音楽もこだわっています。
歌や絵本の音読用音声は、特にこだわって制作しています。何度聴いても飽きないように、ミュージシャンと組んで音楽を作っていますので、子どもの英語教材とは思えないような音楽も取り入れたりしていますが、子どもたちからは好評です。子どもたちが楽しいっていう風に思っていただかなきゃいけないので、先ほども言いましたが、トライアルで聴いてもらって反応を見て作っていくことを心掛けています。
―トライアルはやっぱり何回も行っているんですか?
竹村社長:
はい。試作の段階で何度か行っています。先生たちの意見も聞きながら作ってますね。
―なるほど、本当に日本のお子さんたちに向けた教材!という感じですね。
竹村社長:
中でも『バナナじゃなくてbananaチャンツ』は100人中100人が理解していただいた教材なんですね。これを作るにあたっては社内の出版部から大反対されて(笑)。松香と私が「これは子どもたちの反応がいいからきっと売れるから作ろう!」って言って作ったものなんです。今まではメソッドにあった教材制作が中心でしたが、これはカタカナと英語の違いを心から楽しむ教材です。ただ、「バナナはバナーナ」って言っても誰もついてこないので、「バナナ じゃなくて banana」と言うのが大事で、この本を通じて“そのカタカナは英語じゃない”っていうことを理解できるようになります。最初はよく分からないと言っていた業者さんや本屋さんもこれを聞いて「なるほど!」と言ってくれて、何万部も売れたりしました。英語の発音の大切さをみなさんにもっと楽しく、面白く理解してもらいたいという発想から生まれた商品で、『おもてなしチャンツ』や『ジャパンチャンツ』など、その後も色々作りました。

―確かにかなり印象的ですよね。本当にお子さんは、それこそ体感でバナナとbananaを自分の中で区切りながら英語と日本語どちらも習得されていくんだろうなと。
竹村社長:
これ、シニアにやると「何がどう違うんですか?」って言われちゃうんですよ(笑)。「バナナ じゃなくて banana」って言っても違いが分かんないって。
―そうなんですか(笑)。
竹村社長:
子どもたちは本当に耳が良いんです。すぐに「banana」のほうだけ耳に残って一緒になって、同じように言えるようになります。でも、違う言葉でも言ったりして(笑)。
金子さん:
そうそう。「たまごじゃなくてたまーご」とかって(ふざけて)言ったりして(笑)。
竹村社長:
昔は書店でバナナの帽子を被ってバナくん(バナナチャンツのキャラクター)になりきってプロモーションにも参加していました(笑)。
―そうなんですね!たまに書店で流れているのを聴くんですけど、すごく耳に残ってキャッチ―ですよね。
竹村社長:
そう言っていただけてうれしいです。楽しいをコンセプトに、あとはちょっとユーモアをということで教材開発に力を入れています。
―お子さんの反応ってすごく大事だと思います。でもなかなか大人がお子さん目線で楽しいものを考えるのってすごく難しいと思うんですけど、思い通りにいかなかったことなどはありますか?
竹村社長:
トライアルする時間が少なくて十分に制作に反映できなかったものは確かにありますね。また、海外の教材を仕入れてそのまま売ったりした時期もありましたが、いくら良いものだからと仕入れても、日本の子に合ったものでなければやはりだめですね。すごく売れるわけではなかったので、やっぱりそこの差はあるんだろうなと思っています。
【商品情報】
今回インタビューでも登場した教材の一部をご紹介。
●TAGAKI 10
発売:2018年10月11日
価格:1,089円(税込)
●TAGAKI Advanced 3
SDGs:Problems and Solutions
(TAGAKI(多書き))
発売日:2020年9月16日
価格:1,650円(税込)
●バナナ じゃなくて banana チャンツ
QRコード版 (チャンツシリーズ)
発売日:2024年10月1日
価格:1,650円(税込)
【新刊情報】
2025年9月22日発売の新刊情報をご案内します。
聞いてまねして読めるようになる、子ども向け発音トレーニング教材が登場!
学校で覚えなくてはならない単語数が一気に増加した結果、単語や文章が読めない子ども達も増加しています。
小学生だけでなく、中学校に進学をし英語学習に苦労をしている子ども達のために、パターン化された学習法で「発音から文字へ」「文字から文へ」段階を踏み、「書くこと」が障壁にならないよう工夫されたライティングのない自学教材です。
発音から文字へと学習するのに最適な教材です。スマホやタブレットを使ってQRコードを読み取り、音声や動画を視聴しながら繰り返し練習しましょう。
詳しくはこちらから→ https://www.mpi-j.co.jp/news/2116/
●小中学生のための
発音トレーニングブック 1
~フォニックスで読む力がつく!~
発売日:2025年9月22日
価格:1,650円(税込)
●小中学生のための
発音トレーニングブック2
~フォニックスで読む力がつく!~
発売日:2025年9月22日
価格:1,650円(税込)
●株式会社mpi松香フォニックス公式HP
https://www.mpi-j.co.jp/
・Facebook : https://www.facebook.com/mpiinc
・X : https://x.com/mpiinc
・Instagram : https://www.instagram.com/mpibanakun1979/
・YouTube : https://www.youtube.com/@1979mpi
●TAGAKI®
https://tagaki.jp/
●Amazonストア
・株式会社mpi松香フォニックス “英語が出来る15歳を育てる”
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・TAGAKI®
https://x.gd/G7ycn
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