機能性×デザイン性 LACONIC インタビュー

FEATURE
Text by Hitomi Iida Photo by Ayumi Koseki
仕事計画ダイアリーやスタイルノート・シリーズといった機能性に優れた商品を企画・販売するステーショナリー雑貨ブランド“LACONIC”(ラコニック)。
今回本社を訪問し、会社設立のきっかけやブランドコンセプト、今後の展望などについて、代表の片岡さん、デザイナーの黒澤さん、玉田さんのお三方にお話を伺いました。
<株式会社LACONIC>
2006年7月設立。
機能性に優れたシンプルなデザインで幅広い商品を展開。
ビジネスだけでなくプライベートなど様々なシーンで使えるデザイン性と機能性の高さから、国内だけでなく海外でも好評を博している。

―「LACONIC」を立ち上げられた経緯をお聞かせください。

片岡さん:
元々、僕は四国にある紙製品の製造会社の3代目でして、今年で創業99年になります。そこでは主に文房具や婚礼用品など比較的付加価値の高い商品を製造してきました。特に2000年代は雑貨メーカー全盛期ということもあり、好きなメーカーさんの商品を製造するなど、非常に楽しく仕事をさせていただいておりました。ただ一方で、僕自身雑貨が好きだったこともあり、自分でも雑貨メーカーのお仕事をやってみたいな、と思うようになりまして。実はそのころからデザイナーの黒澤さんと間接的に繋がりがあったんですよ。

片岡さん

黒澤さん:
そうなんです。当時、僕は片岡さんの取引先でデザインのお手伝いをしていたんです。その取引先の方から、片岡さんという方がメーカーを立ち上げたいそうなのでやりませんか?という話を聞きまして、じゃあやりましょうと。立ち上げ当初LACONICは共同経営だったのですが、その後片岡さん一本になりまして、そのタイミングで僕が全体のディレクションをすることとなりました。実はその時に僕も片岡さんもやっとお互いに顔を合わせたんですよ(笑)。それまでは間接的にやり取りをしていたので。

片岡さん:
当時、製造業者がメーカーを立ち上げるのはタブーだったんですけど、黒澤さんたちに提案いただいた内容がとても魅力的で、今振り返ってみると、本能的に始めた感じはありますね(笑)。

黒澤さん:
既存のメーカーを追従する形だとあまり面白みがないので、誰も到達していないようなところからスタートしたこともあり、立ち上げ当初は海外のブランドかと思われたりもしました。それに、事前情報を一切出していなかったので、まわりからしたら突然LACONICというメーカーが立ち上がって見えたんですよ(笑)。

―「シンプルなデザインで、幅広いシーンで活躍する商品」というのが御社のイメージなのですが、ブランドコンセプトをお聞かせください。

黒澤さん:
実はLACONICの名付け親は僕なんです。いくつか候補はあったんですけど、最終的に残ったのが「簡潔な」という意味の「LACONIC」という言葉でして。
基本方針は「使い勝手」と「デザイン性」。LACONICは機能性をキープしながら、デザイン性を新しく違う形で融合することを目指しているんです。使い勝手を考えながら極力引いて、というのも、弊社のデザインは引き算から始めていて、デビューした時のデザインがすでに到達点なんです。ここからは引き算ができないので、極力足し算をしないでどこまでやれるかを15年続けています。
一見手を抜いているように思われるんですけど、引き算を意識しているからこそ、一文字入れる時はどこに入れようか真剣に考えるんです。実際、今進めている新商品の企画でも一文字にすごい時間をかけて考えていて。類似品はたくさん出ていますが、見れば違いが分かりますね。簡単な言葉を入れるほど考える、それがLACONICのコンセプトに通じているんです。

黒澤さん

―設立当初(2006年)から現在までで感じた大きな変化はありますか。

黒澤さん:
多くの変化がある中でも一番大きかったのはコロナで社会構造そのものが変わったことですね。これはスタイルノートの誕生にも繋がっています。
例えば、利便性が高まる中でレコードがブームになったり。手帳だって利便性だけならスケジュール管理ソフトで十分なんですけど、プライベート管理は手書きで書きたいという気持ちが強くなったりしているんですよ。こうしたことが市場で大きく変化したように感じられますね。本屋さんでも本だけを売るんじゃなくて、そこで読みながらコーヒーを飲めるようなハイブリットな部分も生まれてきているんですよね。悪い面だけじゃなくて、こうした良い面も見ると、ある意味良い時代に変わったなあと。

―御社の商品の中でもコンテンツが豊富な「スタイルノート・シリーズ」について、どのようなコンセプトで商品を開発されているのかお聞かせください。

黒澤さん:
元々、日付が入っている手帳を社内で“なまもの”と呼んでいたんですよ。というのも、日付が入っているものは一定期間しか売れないからです。メーカーとしてはもっと長く売りたいという思いがあり、スタイルノートが生まれました。
最初のラインナップは月間・週間・デイリーでしたが、他のメーカーさんも出されていたこともあり、片岡さんも「どうせ出すならいろんなコンテンツが良いよね」と。そこでどういうものを作ろうかと考えたときに、世情を反映しました。コロナの影響で多くの人が不安感から色々と調べることでアウトプットよりもインプットがすごく増えていたかと思います。こうした世情を踏まえ、アウトプットツールを作りたいと思い、スタイルノートのようなコンテンツを企画しました。心の中にたまっているものを吐き出すことで気持ちが楽になるような、何かひとつの支えになれたらいいなという思いがありましたね。

ただ、不思議なことに多くの人はフォーマットがあると、思考が止まってしまうんですよ。大学ノートとかだと使い方に自由度が増すんですけれども。僕からしてみれば、これだけフォーマットがあるんだから、違う思考で使ってみればもっと色々できるじゃんと。それを今年LACONICで提案しているんです。新たな切り口で従来のツールの使い方を変えましょうって。

例えば、スタイルノートの月間の場合、最初の日を「1日」と書かずに「26日」と書いたって良いし、その週だけ集中して書いて、次が3カ月くらい間が空いていても良いんです。もっと自由に楽しんだ方が人生楽しいんだけどなって、いつも感じるんです。
スタイルノート・シリーズは幅広いコンテンツがあって、肩肘張らずに使えるものはもちろん支持が高いんですけど、予想していたのと違うものが売れていると聞いたときに、求めている人にちゃんと届いているんだな、と思いましたね。実際にそれで助かっている人がいるのであれば、メーカー冥利に尽きます。

スタイルノート・シリーズは、ブックマーカーやリフィルなど様々なコンテンツもあり、自由に組み合わせることができる。

―「スタイルノート・シリーズ」はアメリカでも好評ですが、どのような点が現地の人に受け入れられているとお考えですか。

玉田さん:
先ほどのアウトプットの話のように、気持ちを吐き出したいタイミングで使えるところが海外でも売れている要因だと思います。

黒澤さん:
アメリカは、フェイスブックやツイッターが誕生した国ですからね。
SNSを作った文化の人たちが利便性を感じつつ、その反動から手書きノートでオフの部分を求めているのかもしれないですね

玉田さん:
スマホやパソコンといったガジェット系が中心でも、「手で書く」という欲求は人間としてあると思うんですよね。アメリカでも同じように書くことで、気持ちや頭の整理をする人が多いんだと思います。自分のことだけ書いておけるものは使いやすいのかなと。

玉田さん

黒澤さん:
あと手で書くと記憶に残りますよね。
手を動かした筋肉じゃなくて、摩擦音が耳に入って記憶に残るみたいです。タブレットと手書きでは、摩擦係数があるかどうかも違いの1つですね。

―「仕事計画ダイアリー」の特徴について、通常のダイアリーと異なる点はどのようなところですか。年三回のリリース形態となっているのはなぜですか。

玉田さん:
仕事計画ダイアリーが他社と違うところは、掲載期間が16ヶ月という点です。通常、ダイアリーは年初版・年度版の大きな二つで、年初版が1月から12月までの1年間。年度版が4月から3月までの1年間というくくりがあります。

黒澤さん:
学校や会社が4月1日から始まるのを、年度と呼ぶのを理解していない方が多いです。国によって違いますが、それに合わせて手帳業界は動いています。

玉田さん:
世の中に出ているダイアリーは、12月・3月始まりですが、弊社の16ヶ月ダイアリーで9月始まりとしている年初版は、9月から翌年12月まで使えて、前段階の4ヶ月はあくまで準備期間。(Pre9)
12月から始まるハイブリッド版は1月から12月がメイン期間で、前に1ヶ月と後ろに3ヶ月の準備期間。1年間使いながら年度の3月までカバーできます。(Pre12)
3月はじまりの年度版は、4月から3月がメインで、前に1ヶ月と後ろに3ヶ月です。(Pre3)

仕事計画ダイアリーのページ基本構成

―この3種類のタームで意識しているターゲットはありますか?

黒澤さん:
就活生にはハイブリッド版、社会人や学生で手帳を使い始めるときは年度版が多く使われます。4月の入社式や入学式の1ヶ月前から予定を組んで準備をしたり、年度を跨いだ予定を組んだりと、移行しやすいです。繰り返して使う方もいますが、1年の始まりは1月にしたいという理由でシフトする人もいます。移行期間では、新しい手帳に書き写しつつ2冊とも使うことができます。書き写したり、整理して書き直したりすることが楽しいという方はたくさんいらっしゃるので、それぞれの役割が違いますよね。
ただ9月始まりのダイアリーが店頭に並ぶと、10月になったらセール品として扱われてしまいがちです。「始まり」という言葉は「書き始められる」意味で、1月から12月がメインです。それを今年から言い方を変えて「Pre」にしました。Pre9月版・Pre12月版という呼び方、要するにプレオープンですよね。 合理的ですがなかなか伝わりにくいようで、それは全社が同じ動きをしてないからです。4月始まりとしているもので、3月から使えることがありますが、それはうちで言う3月始まりになります。メーカーごとに歩み寄りがないので、エンドユーザーが混乱しているのは事実ですよね。お店でも9月始まりコーナーとされるのですが、長く売ってくださることがあります。

片岡さん:
この整理をしたから長く売れるようになりました。そういう意味でメーカーとしては、Preという言葉を聞いて画期的だと思いました。店頭でもバイヤーの方にも、商品の賞味期限について安心していただけます。

黒澤さん:
買い替える方も1年間使えることを理解してくれています。例えば12月頃に9月版でしか出ていないデザインの商品もありますが、9月版はまだあと1年使えるという認識で購入されます。メーカーにしてもPre部分を取っても取らなくても同じ値段で、今なら増量中みたいな感じです。

玉田さん:
使う人の欲求はいろんな要素が関わってくると思うので、なるべく長く店頭でお客様に見ていただきたいです。

黒澤さん:
LACONICは長期的に展開しているので、今日からでも新しい手帳を使えます。決して無駄なものではなく、ある意味ベストです。
是非エンドユーザーさんは、例えば11月にPre 9月版を買うと損をするという感覚を捨ててほしいです。まだあと1ヶ月余分に使えるというように。
本当にいい意味で浸透してくれると、手帳業界全体で販売タームが大きく変わりますよね。

―御社の商品は個別ではもちろん、組み合わせることでより幅広いシーンで活用できますね。例として「CREATIVE PAD」はノートや書類を挟めて、持ち運びに便利です。
多様化するライフスタイルに対応していくために、ブランドとして心掛けていることはありますか。

黒澤さん:
時流に沿うように提案するというより、こういう考え方もありますよというスタンスです。
こちらが提唱して新しい未来ができることもあるように、ライフスタイルに寄り添うばかりがメーカーの役目ではないと思います。
CREATIVE PADは片岡さんのところが、マグネットを自動で埋め込める最新の機械を導入して作ることになりました。マグネットが埋まっているので紙を挟んでも落ちなく、すぐ開けられて持ち運びにも便利です。
例えば映画などのチラシをもらって家に持ち帰ると、折れてしまっていることありますよね。これがあると綺麗な状態で、家に持ち帰れます。
ビニールペーパーでできた堅い芯材が入っているので下敷き代わりになりますし、さらに新しく作っているのが専用のメモ台紙です。専用台紙がつくことで利便性が上がりました。これだけのものが挟んで落ちなくて、保存できます。玉田さん発案で、W掛けで書く使い方も生まれました。

「CREATIVE PAD」と「PLANNING SHEET」を同行したスタッフが早速使っています。 会議や外出の際などに大活躍で、持っていて気分も上がるようです。

玉田さん:
右と左で使うスピードが違いますよね。例えば左側のToDoは残しておきたいけど、右側のMEMOはどんどん使いたいという時。ノートでToDoとMEMOを一緒のページに書くと、MEMOはたくさん使って次のページ、ToDoは前のページのようになってしまいます。それを分割して、一番表に自分が使うページを残せるようにしました。

片岡さん:
あと普通はここにポケットがあったら便利といったことを考えますが、自分たちはそうではなく、それは邪魔でしょと。それが元々の考え方です。

黒澤さん:
CREATIVE PADで自分たちが最初に想定したのは、カルトンなどを使って絵を描くなどの、クリエイティブな行為をする人たち。展開としてはA4サイズが収まるサイズを想定しました。
HPにも記載していますが多くの使い方があって、店頭でもサンプルの写真を撮られる方もいらっしゃいます。是非自由に使っていただきたいです。

―最後に、LACONIC様の今後の(商品)展開、ブランドとして目指していくところをお聞かせいただけますでしょうか。

片岡さん:
基本的にはステーショナリー雑貨というのが会社のコンセプトでもあり、求めていかないといけないところだと思います。ただ消耗品を作る会社ではなく、持っていて楽しい雑貨的な要素のように、シーンで置き換えると僕たちが作るアイテム全部に可能性があります。
ニッチな人は購買欲があるので、ニッチトップで残れる・選んでもらえるメーカーというのが一つの考えです。また、現実的には紙製品製造の会社というベースもありますが、もっと見識を広げながら違うアイテム・デザインを生み出すこと。そこに関して壁はないです。

黒澤さん:
ダウントレンドという言葉は口にしやすいですが、単純な話ですよね。
STOCKシリーズを紙の箱という言い方をすればダウントレンドですが、新しい感覚で物事を整理したいからこの箱を作ったとなると次世代型。もっとLACONICの存在を知ってもらいたいです。同メーカー規模の生産数から見ても、手にする人は一部です。存在すら知らない人が大半かもしれないので、こういうものを発信しているということを多くの方へ伝えたいです。

STOCKシリーズ

玉田さん:
御社とお取引が始まってから、僕たちの可能性に光が見えています。実際オーダーもたくさんいただいて。僕らのノートのコンテンツがアメリカの人に受け入られるなど、今後の展開は御社にいただいているところもあるので。

黒澤さん:
なんだ仲間は向こうにいたんだっていう。 

一同:(笑)

片岡さん:
日本ではできないこともあるので、御社経由で世界のマーケットが広がるとしたら、僕らの可能性まだまだだと思っています。

黒澤さん:
海外の人がごく普通に扱っている生活習慣で、日本人が理解してない習慣が絶対あるので、それにそぐわったものを日本のメーカーが作る機会があると面白いですよね。あの国ではこういう習慣があるから新しく作れないか、というのは未知の世界ですよね。

今回、LACONICの成り立ちや商品デザインのこだわりなど貴重なお話をたくさん伺うことができました。 
LACONICの皆さん、お忙しい中ありがとうございました!

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