
ボールペンのパイオニア!
OHTO株式会社
1919年創業の老舗文具メーカー。創業時はインクの製造を行っており、その技術を活かして日本初となる「鉛筆型」ボールペンを誕生させた。現在もさまざまなインクやボールペンの開発・製造を行っている。2019年に創業100周年を迎えた。
オートの歴史をたどる
オートの創業者である中田藤三郎氏はもともと造幣局で紙幣用の特殊な染料インクを開発しており、その後独立して1919年に中田凰華堂(なかたほうかどう)を創業しました。
ボールペン自体は第二次世界大戦後、アメリカ駐留軍が使っていたことにより日本で認知されるようになったそうです。その当時日本にはインクをつけて書く万年筆はありましたが、インクをつけずに書けるということでボールペンは非常に画期的でした。こうした中で、創業者の中田氏はインクを開発していたこともあり、1949年に日本初となる木軸の「鉛筆型」ボールペンを誕生させました。この商品は“自動的な鉛筆”というイメージから“AUTO PENCIL”という名前で販売されました。
〈🦉シリタイくんのこぼれ話①〉
社名でもある“オート”の由来は“AUTO PENCIL”から来ており、当初は“AUTO”という表記だったそうですが、車の製造業者と間違われないように現在の“OHTO”という表記に変えたそうです。

その後日本国内でボールペンの市場は拡大しますが、インクのボテや書き味がスムーズじゃないといった問題がありました。オートは万年筆のようにサラサラと書けるものが欲しいという要望に応えるため、1964年に世界で初めて水性インクを使ったローラーボールペンを製造・販売しました。
1949年の「鉛筆型」ボールペンを皮切りにさまざまなボールペンを開発してきたオートですが、開発の中でも歴史的改良のひとつがボールペンの先端部分にあるボールをセラミックに変えたことです。それまでは鉄製のボールでしたが、インクが水性のため錆ができてしまい、書けなくなってしまうことがあったそうです。この課題を解決するため1981年にセラミックボールを使ったセラミックローラーペンを開発しました。セラミックボールは錆びないだけでなく、表面に適度な凹凸があるためインクののりが良く、より滑らかな書き心地を実現されたそうです。この技術を活かしたボールペン(CB-10F)は1990年の先進国首脳会議(G7)に採用されました。2006年にはゲルインクにもこのセラミックボールを導入したボールペンが開発されています。
水性インクは油性と違いインクが空気に触れることでペン先が乾いて書けなくなるという課題がありましたが、直接空気に触れない特殊な構造“水性ノンドライリフィル機構”を開発し、ペン先が乾きにくい水性ボールペンを生み出しました。“水性ノンドライリフィル機構”はその独自性から特許も取得しています。
今ではほとんどのボールペンに採用されているインクの残量が見える透明なリフィルや、持ち手部分にあるゴムのグリッパーといった要素もオートが初めて開発したのが始まりだそうです。近年も書いた後にすぐゲルインクが乾く“速乾ゲルインク”など良質なボールペンを作るためにさまざまな開発を現在進行形で行っています。
ミクロな加工でペン先を作る

今回特別にボールペンの工場を見学させていただきました。
まずは文字を書く上で重要なペン先部分、通称“チップ”の製造工程を見せていただきました。工場内には60年前の機械から最新鋭のものまであります。機械のほとんどが特殊ゆえに部品調達が難しいことから、稼働していない古い機械は故障した際に部品を再利用するために保管しているそうです。

チップを加工する機械は小さな筒状の器具が円形に配置されており、それぞれの器具で少しずつ穴を開け、形を整え、ボールを入れてチップを形成するのですが、みなさんチップの材料がなんだか分かりますか?
実はワイヤーなんです!

実際に加工前のものを見せてもらいました。直径1~1.5ミリと細く、それを既定の長さにカットしてチップに加工していると教えてもらいましたが、機械のサイズ感も相まって全く想像ができませんでした…!中に入れるボールも風が吹いたら飛んでいきそうなほどの極小サイズで、これを機械で1個1個入れているのかと思うと気が遠くなりそうです…。

また、チップの先端(ペン先)部分にはインクが出るための溝が彫ってあるのですが、こちらはもはや肉眼では見えないため顕微鏡越しに見せてもらいました(笑)。普段何気なくボールペンを使っていましたが、ペン先だけでもこんなに緻密で精巧な加工が施されているとは思いもしませんでした!
〈🦉シリタイくんのこぼれ話②〉
チップを形成する機械は全てスイス製で、この機械だけは日本で調達できないとのこと。さらに、削るための微調整が必要なので、しっかりとした技術者がいなければ動かせないそうです!
自社の技術を活かした独自の機械
次にリフィルの製造からペンができるまでの製造工程を見せてもらいました。
先ほどの工程でできあがったチップ(ペン先)をリフィルに取り付ける前に、チップの中に小さなスプリングを入れます。インクには油性、水性、ゲルとさまざまな種類がありますが、インクが液体に近いほど漏れやすいので、それを防ぐためにスプリングを入れるそうです。文字を書かない時はスプリングの弾性力でボールが固定されるためインクが漏れず、書く時の筆圧でボールとスプリングが押されると隙間からインクが出てきます。ノック式のボールペンにスプリングが入っているのは知っていましたが、ペン先にもスプリングが入っているのは今回初めて知りました。

工場内ではリフィルにインクを充填したり、ブランド名の印字をしたり、キャップをつけたりとさまざまな機械が稼働しています。ぱっと見ただけではどのような作業が行われているのか分かりにくいのですが、しばらく観察しているとどの作業をしているのかが分かってくるので、無心で見続けてしまいます。先ほどのチップの中にスプリングを入れる機械含め工場内で稼働している機械の一部は、なんと自社製だそうです!ボールペンの仕組みを理解しているからこそ、製造する上で重要な精密さや工程がイメージできるため、自社で設計した機械のほうが高品質のボールペンを作るのに適しているそうです。

商品の種類にもよりますが、工場では1日あたり3~5万本のボールペンを製造しているそうで、製造量は年々増えているとのことでした。
〈🦉シリタイくんのこぼれ話③〉
金属ペンの組み立ては機械を使わずに、1本ずつ丁寧に確認しながら手作業で行っているそうで、1か月あたり5~7万本を組み立てているそうです!
商品開発インタビュー
今回特別に樫村社長、海外営業部の笹川さん、企画開発課・課長の中村さん、製造課・課長の小林さんの4名に商品開発やお気に入りの自社商品などについてインタビューさせていただきました!
―1919年にインクの製造から始まり、現在までさまざまなボールペンを製造・販売されていますが、ボールペンを開発する上で昔と今とで大きく変化したことはありますか?
中村さん:
技術的な面で言いますと、ボールの素材を変えたり、水性インクを開発したりといった昔開発した技術は今現在も使っていますし、それをブラッシュアップして現代に通用する形に作り上げていますね。ボールペンが日本に来た当時は、本当にインク漏れがひどくて日常使いに耐えられない品質だったので、私たちオートがそうした問題をクリアした、ちゃんとしたボールペンを普及させたと自負しております。そういったことを大切にしながら、書き味や品質を保つ、基本的な機能をけん引するように目指して開発・製造をしています。
樫村社長:
昔と今で大きく違うところで言うと、工場見学でもお見せしたチップ(ペン先)の中にスプリングが入っているところですかね。昔は入っていなかったんです。このスプリングを入れる技術も精度が重要で、少しでも上手くいかないとインクが漏れる原因になっていたんですけど、今はその辺の技術もかなり進歩しています。
―技術の面で言うと、セラミックボールを使ったり、ノンドライ機構で特許を取られたりと以前からさまざまな商品開発をされていてすごいなと思いました。
笹川さん:
ささやかなこと、例えばインク残量が見える透明なリフィルとかグリッパーなんかも、何か改善していこうという開拓精神を常に持っていないと、こういったことはできないのかなと思っています。セラミックボールに関しては、鉄のボールの表面がツルツルなのに対して、セラミックの表面はクレーターになっているので適度にインクが溜まってスムーズに書けるんですけど、なぜか他のメーカーさんはあまり使っていないんですよね。

―普段は透明のリフィルタイプのペンを使っているので、御社が製造されている金属製のリフィルは高級な印象を受けました。普通のものと金属製のものとでどういった違いがあるのでしょうか?
中村さん:
素材の面で言うと、金属製のものはプラスチック製のものよりもがっちりしているので、筆記の安定性があります。
樫村社長:
あとはインクが蒸発しないことですね。プラスチック製のものは通気性があるので、使わないとどんどん蒸発してしまうんです。なので、金属製のほうが長持ちですね。
―ずっと使っていなかったペンを久しぶりに使ったらインクが出ないことがあるのですが、それも蒸発が原因でしょうか?
笹川さん:
そうですね。あとは、ペンを上に向けた状態で書いたりすると空気が入ってしまうので、そういった場合もインクが出なくなってしまうので書けなくなる原因のひとつです。
樫村社長:
スプリングが入っているのはそういった上書きを防ぐ意図もあるんですよ。昔の油性のボールペンはインクの粘度が高かったので、スプリングが入っていなくてもインクが漏れなかったんですけど、上書きすると空気が入ってインクが下に漏れてしまったんです。今はスプリングが入っているので、上書きしても離せばスプリングがボールを押して空気が入りにくいようになっています。
笹川さん:
でも上書きはしないほうが良いです(笑)。

―以前、当社とYoseka Stationery(アメリカ・ブルックリンにあるアジアン・ステーショナリー・セレクトショップ)とのコラボで製造されたボールペンがあるとお聞きしたのですが、当時のこだわりや印象に残っているエピソードをお聞かせください。
笹川さん:
コラボしたボールペンはGS01というオートブランドの中でも非常に売れ筋商品でフォルムが特徴的なんですけど、Yoseka Stationeryがそのフォルムと書き味を気に入ってくれてお声がけいただきました。Yoseka Stationeryのロゴが漢字なんですけど、商品に漢字のロゴを入れるのが初めてだったので新鮮でした。あとは、商品の色をお店のカンパニーカラーである深緑にしたんですけど、こちらはアルマイト加工で色をつけました。
中村さん:
アルマイトって金属加飾という金属自体に色がついているような色合いを出す加工方法です。吹きつけの塗装とかには出せない風合いで、金属感が出るんですね。
―では、色がはげたりもしないんですか?
笹川さん:
普通の塗装だとはげてしまいますけど、アルマイトの場合はならないですね。
中村さん:
ペンの形としてはかなり個性的な形をしているので、最初はどうなんだろうと思ったんですけど、良い意味でスタンダードな形じゃないという点で、それが逆に長く愛されているのがうれしいですね。
樫村社長:
彼(中村さん)がデザインしたからね。
―中村さんがこちらのGS01をデザインされたんですか?
中村さん:
はい。もともと当社の金属ボールペンのデザインの制約として、軸をNC機という回転している軸に対して横から刃を当てて形を作り上げる製法を使うんです。GS01の先端は丸軸から作られているように見えるんですけど、もともとは六角形で、それをNC機にかけたらどういったラインが軸の中でできるのかなと思ったのが、最初のデザインのコンセプトとして始めた商品ですね。
笹川さん:
ノック部分が六角形になってまして、ペン先にいくにつれて少しずつ丸みを帯びてくるんです。

―本当だ!自然過ぎて全然気づきませんでした!
中村さん:
これが特徴なんです。ちなみに逆バージョンもありまして、GS02というペン先が六角形でノック部分にいくにつれて丸みを帯びたデザインになっています。ペンって3点で持つので三角形や六角形といった3の倍数が持ちやすいと言われているんですけど、それを削ることであいまいな線が出てくるので、人によってこの辺りが持ちやすいといった持ち心地が変わるのも面白いなと思いました。
笹川さん:
GS01のほうは今度新しい色に変更したものが発売されます。
中村さん:
以前はギラギラした色だったんですけど、最近の流行に合わせたマットな色合いでアルマイト加工をしています。

―これまでの商品開発の中で印象に残っている出来事や、予想外に反響があった商品などはありますか?
中村さん:
予想外に反響があった商品はTL01という商品ですね。これは業界的にも世界的にも最小級の一番細いボールペンなんですけど、中芯も交換できるノック式でして、カードサイズのペンホルダーもセットでついているのでお財布などにも入れられます。一般的な名刺と同じ長さの91ミリにこだわりました。名刺入れにしまえるサイズを前提にしたので、書き味は二の次というか、どうしても細いので書きづらいと言えば書きづらいんですけど(笑)。これだけ小さいので売り方は非常にナーバスになっていたんですけど、意外と反応が良くて、わりとロングセラー商品ですね。
樫村社長:
昔は手帳用のボールペンが花形商品だったんですけど、スマホが普及してからは人気がなくなってしまって。でも、なぜかこのTL01は販売数が落ちず、違った形で売れ続けていますね。ちなみに自分は名刺入れに入れて、名刺交換をした時に日付を入れるのに使っています。


―普段カバンにペンを1本入れているんですけど、忘れてしまう時があって(笑)。しかもそういう時に限ってペンが必要になってコンビニで買ったりするので、こういった商品はかさばらなくて助かりますね。
笹川さん:
分かります(笑)。実は昨年あたりから似た商品のWN02という木軸のシャープペンもすごく売れるようになっていて、なかなか生産が追いついていない状況です。
―いろいろな商品をご紹介いただきましたが、みなさんのおすすめ商品やイチ押し商品を教えてください。
笹川さん:
私はやっぱり書く時に長くできて、しまう時にコンパクトになるボールペンですね。特徴のあるペンなのでそれを使っていると「なあにそれ?」と注目してくれたり驚いてくれたりするので、今でも気に入って使っています。
樫村社長:
でも廃盤になっちゃったからね。
笹川さん:
なので、ぜひ復活してほしいなと思っています(笑)。
中村さん:
書き味で言ったらやっぱりC305(セラミック水性ボールペン替芯)を使った商品ですね。本当にどこに出しても負けない書き味だと感じております。インクの質は違うんですけど、GS01も同じようにサラサラ書けて、ノック式だし、重量感や持ちやすさという点でこちらも最近気に入っています。
小林さん:
私はFUDE BALL(フデボール)ですかね。なかなか手帳には使えない太さなんですけど、「FUDE BALLはオートが作ってるペン」っていうところから知ってもらえたら良いなと。あと、たまに“フェードボール”って読まれることがあるので、もう少し名前を知っていただければと思います(笑)。

―FUDE BALLは色の種類も豊富なのが良いですよね。
中村さん:
こちらは汎用品で大量生産されているので、いろんな色を試せるというのもあります。あとは顔料インクで耐水性があるので、漫画の枠を描くのに使われている方もいますね。
樫村社長:
私のイチ押しはゲルペン(GS02)かな。ボールペンって寝かして書くと、構造上書きにくいことがあるんですけど、このゲルペンは寝かしても非常に書き心地が良くて。ずっとお気に入りなんだけど、最近GS01の油性ボールペンも良いなと思ってます。油性もなかなか捨てたもんじゃないなと思って(笑)。
―インクの話題が出たので、みなさんのお好きなインクの種類もぜひ教えてください。
中村さん:
水性で言うとやっぱりC305の書き味ですかね。キャラクター的に言ったら油性の良さもあるし、水性のデメリットもあるので甲乙つけがたいですね(笑)。汎用性で言ったらゲルインクでセラミックボールを使ったGS01-G5が好きです。油性のちょうど良い硬さという点ではGS01-S7も改めて悪くはないなって最近感じています。
笹川さん:
私は油性が好きですね。当社が最初に作った「鉛筆型」ボールペンの復刻版を愛用していたんですけど、インクが切れちゃいました(笑)。
小林さん:
書き味で言ったら私もやっぱり水性ですかね。OKB48というさまざまなメーカーのボールペンを採点するイベントがありまして、現地で試し書きをして投票する形式とウェブで投票する形式のふたつがあって、試し書き形式のほうで当社のCR01という太軸タイプの水性ボールペンが1位になったんですよ。
中村さん:
常に1位は某メーカー様のペンなんですけど、それを唯一抜いた商品ということで取り上げられたこともあります(笑)。やっぱり書いてもらうと納得していただけるっていうのがありますね。
樫村社長:
私は書いていて楽しいのはやっぱりゲルインクかな。ずっと書いていて楽しいし、不快じゃないところが良いです。
―最後に今後発売予定の商品を教えてください。
中村さん:
今年の11月にCR01の新しいタイプが発売されます。形自体は普遍的で当社のずっと愛され続けている形ではあるんですけど、アルマイトで新しい加工ができるようになったのでグラデーションにチャレンジしました。

―色も重さも重厚感があって良いですね。
中村さん:
最近グラデーションを施しているペンは結構あるんですけど、吹きつけ塗装なんですよね。アルマイトは液体に漬けて色をつけるので、あまりグラデーションができるという感覚はなかったんですけど、今回取り入れてみました。
樫村社長:
色も社内で意見を聞きながら試行錯誤しました。
中村さん:
どうしても太軸なので、まずは男性に向けた色展開にしようと思い、最終的にこのカラーバリエーションになりました。
笹川さん:
やるかやらないかという悩みもあったんですけど、実際にできてみると結構渋くて良いですよね。
【商品情報】
水性ボールペンCR01
ボール径:0.5mm
ゴールドブラック(JAN:4971516032396/品番:CR01-05-GDB)
シルバーグレー(JAN:4971516032389/品番:CR01-05-SVG)
ブルーブラック(JAN:4971516032464/品番:CR01-05-BLB)
グリーンブラック(JAN:4971516032402/品番:CR01-05-GNB)
価格:2,500円(税抜)
今まで何気なく使っていたボールペンですが、今回工場見学やオートのみなさんのお話を聞いて、ボールペンって奥が深い!と思いました。
オートのみなさん、お忙しい中取材にご協力いただきありがとうございました!
●オート株式会社
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・YouTube:http://www.youtube.com/@ohto1381
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