外国人にとっての日本の魅力とは?日本人に知ってもらいたい「外国人がシリタイ日本」
和食の英文レシピ集や、外国人向け日本語学習書など、日本に関する書籍を英文で発行している専門出版社。「東洋と西洋の架け橋」をモットーに、これまで7000タイトル程を刊行。
外国人観光客は日本のどこに魅力を感じ来日するのか?
日本人が考える日本の魅力と、外国人観光客が考える魅力との間にはギャップがあります。日本人にとって当たり前の事、たとえば国土の約7割を森林が占め自然が豊かである事、を多くの外国人観光客は魅力的に感じます。しかし大多数の日本人はその事に気づいていません。本稿では、外国人観光客が考える日本の魅力について紹介します。
2022年10月11日より、水際対策緩和の一環として個人旅行客の訪日が解禁となりました。折からの円安の影響もあり、今後訪日外国人観光客は徐々に増加していくと予想されます。
2013年以降、国を挙げての外国人観光客の招致の結果、2012年は年間840万人であった訪日外国人観光客は、2019年に3200万人に達しました。「爆買い」や「インバウンド」といった言葉が一般的となり、街で見かける外国人も日に日に増えていきました。
ところが2020年3月、新型コロナウィルス感染症の世界的流行により、外国人観光客は入国できなくなり、入国制限が2年半続く事態となりました。この間に東京オリンピック2020は2021年に無観客で開催されたのは記憶に新しいところです。
インバウンド需要の復活に際し、今後の訪日観光客に対する施策をする前に、「外国人観光客が日本の何に魅力を感じているか?」を理解する必要があります。本当の需要はどこにあるのかを知ることが第一歩です。
外国人が感じている主な日本の魅力は1)文化風習、2)豊かな自然、3)歴史、4)POPカルチャーです。全体的に訪日動機は「体験型」であり、日本ならではのコトを体験するのが主な目的になります。
・日本の社会、文化、風習の魅力
日本を旅するうえでまず挙げられるのは、日本が安全な土地であることです。また通りやホテルの客室が清潔であるなど、安心して旅行ができる環境が整っていることが外国人観光客にとって重要です。また「おもてなし」に代表される日本のホスピタリーの高さ、たとえば、「道を訪ねた際には丁寧に対応してもらった」など日本人の評判が高いことも挙げられます。
和食を現地で体験することは多くの観光客の主目的であり、日本ならではの独自の食文化体験は、来日する動機として上位に挙げられます。また日本独自の風習として「お祭り」は魅力的な行事であり、より日本らしさを感じられるイベントです。
・豊かな自然
日本は国土の約7割が森林であり、豊富な水資源がある世界でも稀有な国です。富士山や北アルプス、沖縄のサンゴ礁など、外国人観光客にとって魅力的なスポットが数多くあり、春の桜シーズン、秋の紅葉など、季節ごとに自然を満喫できるのが魅力です。また北海道ニセコのパウダースノーが楽しめるスキーは世界中で人気があり、スキーでの疲れを温泉やグルメで癒すことができる日本でのスポーツアクティビティーは魅力的です。
・歴史
2000年近くの歴史を誇る日本。ユネスコ世界遺産が数多くある日本は、その豊かな歴史が外国人観光客にとって魅力的です。清水寺や金閣寺などの寺社仏閣、姫路城や松本城のような独特の城郭、白川郷のような古民家など、日本の歴史を感じられるスポットが人気です。
・POPカルチャー
日本のPOPカルチャー、とりわけ日本のアニメと漫画は世界中で人気があります。アニメグッズ目当てのショッピングや聖地巡りなど、本場を楽しみたい外国人観光客は数多くいます。また日本発祥のカラオケやプリクラ、ファッションは海外で人気です。
このように、外国人観光客にとっての日本の魅力は、日本人が考えるものとギャップがあるのではないでしょうか。テーマパークやショッピングモールなど、つい日本人向けの観光地に目が向きがちですが、案外身近にある日常的なモノ、コトが実は大きな観光資源である場合もあるのです。
出版を通して感じた日本に対する興味の変化
チャールズ・イー・タトル出版は70年間に渡り、出版物を通して日本の魅力を世界に発信してきました。当初は進駐軍向けの地図やガイドブックの出版が中心で、「日本のカトリック教会ガイド」など、日本に駐在する軍属向けの出版物が大半でした。
その後、東京オリンピックや大阪万博などを契機に日本への旅行需要が増え、日本の民芸、和食など観光客向けの出版物が増えてきました。
2000年代に入り、日本のPOPカルチャーを紹介する書籍など、新たなジャンルが増えていきました。またSNSにより情報量が飛躍的に増加した影響で、海外で注目される日本の現象がリアルタイムで発信されるようになりました。この影響によりテーマを深掘りした書籍が好まれるようになり、漫画技法書や金継ぎや刺し子など、実用書の出版点数が増えてきました。
ここ10年で感じる大きな変化は、個人の趣味嗜好の細分化です。元々あったのでしょうが、SNSでそれらが可視化され、書籍に求められるものが変化したと感じています。以前であればニーズの少なさから出版を躊躇したテーマのものも、最近では積極的に出版しています。たとえば健康の秘訣に関するハウツーやセルフヘルプ関連書などで、以前なら禅メディテーション止まりであったものが、日本の田舎暮らしからヒントを得た健康の秘訣を紹介する書籍を出版したところ売れ行き好調です。
出版を通して紹介したい日本の魅力
以前であれば「Japan」「Kyoto」「Sushi」など大枠でとらえた日本のステレオタイプを紹介する書籍が主流でした。時が経つにつれ求められるテーマは細分化し、より深掘りしたものが好まれるようになりました。今後はまだ埋もれている日本の魅力を掘り起こして参りたいと思います。外国人著者の視点から再発見された日本の魅力、日本人が生み出すソフトパワー、以前は外国人に敬遠されていた料理、食材の紹介などを積極的に行っていきたいと思います。
チャールズ・イー・タトル出版
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